ザッケローニ監督も注目!新潟のFW、川又堅碁って何者? (2ページ目)

  • 大中祐二●文 text by Onaka Yuji photo by AFLO

 だが、とにかく粗削りで不器用。自分で自分のプレイをうまくまとめられず、「それを外すか?」というシュートを、ポストやバーに当て続けた。プロデビューとなった2008年5月のナビスコカップ横浜F・マリノス戦では、あまりの気合いの空転ぶりに途中出場から11分後、鈴木淳監督(現・千葉監督)に再びベンチに下げられる屈辱を味わっている。2011年の第11節・柏戦では、負傷者続出でリーグ戦初先発のチャンスがめぐってきたにもかかわらず、試合前日に腹痛を起こして出場をフイにしている。

 そういう憎めない部分があるからこそ、川又は新潟サポーターから愛されてきたのかもしれない。そのシュートがポストやバーを叩けば叩くほど、「次こそは、きっと――」というファンの期待感は膨らんだ。『未完の成功体験』を重ねていく長身で丸刈りのFWは、どこかバスケットボール漫画『SLAM DUNK』の主人公――、桜木花道を彷彿(ほうふつ)とさせる。

 だが現在、ピッチ上でマッチアップした相手選手に、「お前、誰だよ?」と尋ねられることはないはずだ。日本代表のザッケローニ監督も見守った第30節・湘南戦では、今シーズン2度目のハットトリックを達成。ゴール数も20点の大台に乗せてJ1得点ランク単独2位となり、22得点の大久保嘉人(川崎F)を追いかける。J1リーグ初ゴールは、今シーズン第9節の清水戦。そこから3試合連続ゴールで、3試合目の鳥栖戦ではハットトリック達成と、一気にブレイクした。昨シーズンは期限付き移籍先の岡山でプレイしており、前年J2の日本人プレイヤーが、J1で20得点挙げるのはリーグ初。また、新潟で20得点プレイヤーを輩出したのはチーム初と、快進撃の真っただ中にいる。

 ストライカーとして覚醒するキッカケのひとつが、昨シーズンの岡山でのプレイにあるのは間違いない。岡山では38試合に出場し、18得点はリーグ2位タイ。プロになって初めてレギュラーとして試合に出続ける中で、「今まで感じたことのない責任感を味わった」という。

「いくら練習でシュートを決めても、試合で決めなければチームは勝てない。試合に勝てなければ、選手もサポーターもみんなが困る」。この責任感はプレッシャーではなく、それまで新潟でまったく結果を出せなかった呪縛を断ち切る方向に、むしろ作用した。

「昔からゴールを決めるのは簡単だと思っていた。きれいなシュートやスーパーなシュートがうまいわけではないけど、それとゴールを決めることとは別だから」

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