ザッケローニ監督も注目!新潟のFW、川又堅碁って何者?

  • 大中祐二●文 text by Onaka Yuji photo by AFLO

「誰だよ、お前? 名前を教えてくれよ」

 激しい競り合いの直後、闘莉王にすごまれた。2011年のナビスコカップ準々決勝、新潟対名古屋でのことである。

 闘莉王がいぶかしがったのも、無理はない。プロ4年目の川又堅碁(けんご)は、180センチを越える長身ではあるものの、まだまだ細身で頼りない身体つき。なにより、プロでノーゴールと、まったくの無名FWだったからだ。

ザッケローニ監督の目の前でハットトリック。急激に注目され始めた新潟のFW川又堅碁ザッケローニ監督の目の前でハットトリック。急激に注目され始めた新潟のFW川又堅碁 川又はこの試合、1-2で迎えた後半アディショナルタイムにプロ初ゴールを挙げている。左サイドバックの酒井高徳(現シュツットガルト)が上げたクロスを、パワープレイで前線に上がっていたセンターバックの鈴木大輔(現・柏)が頭で落とす。素早い動きで川又が闘莉王の背後を取ったのは、それとほぼ同時だった。そして、利き足の左で放ったシュートは名手・楢崎正剛の脇を破り、ゴールネットを揺さぶった。

「選手として闘莉王さんのことはすごく尊敬している。でも、試合になれば別。相手が誰であろうと絶対に負けたくなかったし、アドレナリンがすごく出ていた」と、川又はそのゴールを振り返る。

 しかし、川又の起死回生の同点ゴールが、チームの勝利に結びつくことはなかった。延長で一度は逆転したものの、再び引っ繰り返されて3-5で敗退。22歳の誕生日を1週間後に控えていた川又に、試合後、笑顔はなかった。

 ムチがしなるように躍動するプレイぶりは、野性味たっぷり。利き足の左だけでなく、右足からのシュート、高い打点のヘディングシュートも強烈だ。なにより常に、全力でゴールを目指すプレイスタイル――。2008年、愛媛の小松高校から新潟に加入するや、たちまちサポーターの心を虜(とりこ)にした。

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