欧州遠征2連敗も、岡崎慎司だけがポジティブな理由

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano MIKI

ブラジルW杯まで234日
『ザックジャパンの完成度』
連載◆第24回:岡崎慎司

 10月の欧州遠征は、セルビア戦が0-2で、ベラルーシ戦が0-1。W杯に出場できなかった国から1ゴールも奪えずに連敗を喫した。

 この遠征の前までは、6月のコンフェデレーションズカップ(以下、コンフェデ)や、8月のウルグアイ戦で崩壊した、守備の立て直しが急務になっていた。今回、その守備は良くなる兆しを見せたが、2試合で無得点と沈黙した攻撃が、新たな問題としてクローズアップされた。その深刻さを物語るように、本田圭佑、香川真司ら攻撃陣は、そろって厳しい表情を見せていた。

無得点に終わった欧州遠征。岡崎慎司は果敢にゴールを狙っていたが......。無得点に終わった欧州遠征。岡崎慎司は果敢にゴールを狙っていたが......。
 そんな中、2列目の右サイドを担う岡崎慎司は、「悲観することはない」と、一貫してポジティブな姿勢を崩さなかった。敗戦の重苦しい雰囲気の中で、そのスタンスには違和感すら覚えた。岡崎の言葉の真意は、いったいどういうことなのだろうか。

「アウェーとはいえ、セルビア、ベラルーシという、W杯に出られないチームに連敗した。これは、現実として日本が弱いということであって、それが今の自分たちの実力かな、と思います。このままだと、W杯で前回よりもいい成績を残すことは難しいだろうし、勝つ確率もかなり低いと思う。でも今は、そのW杯で勝つ確率を上げていく作業をしている段階。(今回の遠征では)結果は出なかったけれども、自分たちの目指す方向は間違っていない。だから、悲観する必要はないかな、と思っています」

 岡崎の言葉を聞いて、今ひとつピンとこなかったのは、「目指す方向」である。ショートパスをつないで攻めるスタイルは、アジアを突破してきた日本のお家芸とも言えるが、その精度を高めることが「目指す方向」なのだろうか。

「セルビアもベラルーシもそうだけど、欧州のチームはどこも結構強い。そういう相手に対して、ショートパスにこだわった攻撃や、きれいな形の攻めだけで崩すのは難しい。それに、その攻撃で自分の動きを読まれたりすると、攻め手がなくなることを、コンフェデやウルグアイ戦で感じたんです。型にはまった攻撃は、言ってしまえば、アジアとか格下相手に通用していただけ、ということ。世界を相手にして戦うには、1、2パターンしかない攻撃を、3、4パターンに増やさないといけないし、それをチームとしてやっていかなければいけない。(ザッケローニ)監督も、そうしたことが必要だと言っていた。ショートパスにこだわるとかじゃなくて、W杯に向けて勝つサッカーを確立するのが、今、自分たちが進むべき方向だし、そのために攻撃パターンを増やすことが、今回の(欧州遠征の)大きなテーマだったんです」

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