Jリーグにビッグクラブが存在することの功罪を考える (2ページ目)

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 Jリーグのクラブが常にACLで優勝争いをして、毎回クラブワールドカップに出場することを目指すのであれば、もっと資金力と競争力をつけないといけない。ACLで中国、韓国、中東のクラブと互角以上に渡り合って、さらにクラブワールドカップでヨーロッパや南米のクラブに肉薄することを目標にするのであれば、Jリーグで中心になっていくビッグクラブが存在すべきだ。そこに資金と優秀な選手が集まってくる図式がないと、世界の舞台で勝ち抜いていくことは難しいだろう。

 今年の浦和はお金をかけて補強をしたという意見もあるかもしれないが、実は獲得したのは移籍金がかかっていない選手がほとんどだ。移籍金がかかったのは那須大亮だけであり、つまり、お金をかけた補強とはいえない。私としては、「大型補強」という表現にはやや抵抗があるので、非常に的確で効率のいい補強をしたというのが正しい評価だろう。そう考えると、今の浦和であっても、まだビッグクラブとは呼べない。

■ビッグクラブがあることのメリットとデメリット

 ドイツであればバイエルン、スペインではバルセロナとレアル・マドリードという、国際舞台で結果を残しているクラブがある。リーグ戦でも常に優勝候補であり、チャンピオンズリーグ(CL)というヨーロッパを舞台にした戦いでも結果を残す。

 昨シーズンのCL準決勝にドイツとスペインのクラブがふたつずつ残ったというのが、ビッグクラブがあることのメリットのひとつだろう。国内リーグで断トツの強さを発揮すれば、CLでの競争力も高まる。その国のトップのクラブにいい選手が集まるわけだから、当然国際舞台でも力を発揮することができる。

 反面、そうなると国内リーグの見どころが半減する。それが、ビッグクラブが存在することのデメリットといえる。たとえば、スペインはバルセロナとレアル・マドリードの二強になっており、ほかのクラブは二強と対戦した時にしか注目が集まらず、二強以外同士の試合はお客さんが入らなくなってしまう。さらに、それらのクラブがバルサやレアルと対戦したときに、5点差6点差で負けてしまうことが当たり前になってしまうと、観客も試合を観るモチベーションが下がってしまう。そういう問題が生じることも事実だ。

 またドイツでは、昨シーズン、バイエルンがリーグ優勝を決めるのがあまりにも早過ぎたと言われている。ドルトムントがナンバー2の地位を築きつつあるが、ほかのブンデスリーガのクラブがバイエルンやドルトムントに少しでも近づいていかないと、国内リーグは盛り上がらないだろう。

 そう考えると、多くのクラブに優勝のチャンスがあるJリーグは魅力的と考えることもできるし、クラブ間の戦力差がブンデスリーガやリーガ・エスパニョーラのように拡がりすぎることは問題ではある。ただ、飛び抜けて強いクラブがないということは、「ジャイアントキリング」が存在しないということでもあり、その面白さがないということでもある。

 強いビッグクラブを倒すためにそれ以外のチームが全力を傾け、対するビッグクラブはいろいろな策を講じられる中でも勝っていくことを求められるので、それによって戦術的な深みと面白さが出てくる。大相撲で、平幕の力士が横綱に勝つと金星と言われるように、番付があって初めて、番狂わせの面白さがある。

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