宮間あや「ごまかし発言」で見えた、なでしこの問題 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 選手間のギャップはさらに深刻だ。最も懸念されるのは中堅以下の選手の伸び悩み。3月のアルガルベカップでは澤穂希、宮間あや、大野忍、福元美穂らロンドンオリンピックを主力として戦った選手の招集が見送られた。新チームの軸へと佐々木則夫監督が成長を期待する大儀見優季、川澄奈穂美、岩清水梓、海堀あゆみらには意識改革の名目でチームを牽引させた。しかし、気合いは空回り。若手の発掘も成果は芳しくなく、結果は5位。なんとか立て直そうとする中堅選手たちの焦りが手に取るように伝わってきた。

 そして、高瀬愛実、田中明日菜、岩渕真奈といったワールドカップ、オリンピックを経験しながらも、中心に入り切れない選手たちは時折与えられるチャンスをモノにできず、自らの殻を破れない時間が続いている。ロンドンでの戦いも終盤になるにつれて、フィットする選手とそうでない選手の温度差が顕著に表れるようになった。準々決勝のブラジル戦を前に一度はこの温度差が原因でチームは空中分解寸前のところまで行った。それほど、意識のバラつきはなでしこジャパンにとって、避けなければならないことだ。それがこの東アジアカップではまた顔を出し始めた。

 さらに異なるバラつきも見えた。おそらく、これが現チームに最大の問題点ではないだろうか。それは描くビジョンのバラつきだ。おそらく、指揮官と選手間、また選手間同士にもそれが感じられる。

 新戦力発掘から一転、計算できる選手を招集して行なわれたのが6月のニュージーランド戦からイングランド、ドイツとの対戦を含む3連戦。佐々木監督はここで初めてDF裏を狙うタテへの速い攻撃を試みた。「オリンピックを戦って、周りの国は速い攻撃が多い。日本も次のステップとしてタテへの攻撃に着手するのは自然の流れ」と佐々木監督は言う。これをチャンスと力が入ったのが、タテへの攻撃を切望していた大儀見、大野、安藤梢、宮間ら攻撃陣だ。これまでの戦いでは、常に前線からのプレスに追われていた攻撃陣。タテ攻撃の取り組みは選択肢の広がりを予感させるものだった。

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