宮間あや「ごまかし発言」で見えた、なでしこの問題

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

今年に入って親善試合なども含め、3勝4敗3引き分けと、 決して調子が良いとは言えないなでしこジャパン今年に入って親善試合なども含め、3勝4敗3引き分けと、 決して調子が良いとは言えないなでしこジャパン「もうごまかしはきかない」――東アジアカップの最終戦で韓国に敗れた後、キャプテンの宮間あやが発した言葉が心に残る。

 想い当たる節はいくつもある。そのすべての根底にあるものは、さまざまな形ではびこる"ギャップ"だ。なでしこジャパンがその名を世に知らしめたのは、言わずと知れた2011年のワールドカップ優勝だ。翌年のロンドンオリンピックでは史上初の銀メダルを獲得。世界の舞台においても、日本の立ち位置が変わった。しかし、自分たちの力を信じ、結果として表せるようになってから、まだ1年しか経っていないのだ。女王のメンタルなど持ち合わせる時間などどこにもなかった。けれど世間はそうは見ない。重圧がなでしこの面々にのしかかっている。新たなチーム作りがスタートしたばかりのこの時期にもかかわらず、である。新たな試みを表現したくても、結果を求めるあまり、殻を破れないでいるもどかしさを感じることも多々あった。

 大会期間中に危機感を募らせていたのは、左サイドバックに定着しつつある宇津木瑠美だ。「極端に言えば、攻撃のチャンスに両サイドバックが上がっていってもいいと個人的には思っている。それで失敗したなら、その時に解決策を考えればいい。結果を出すことも大事だけど、そのために今やらなければいけないトライが出来ないのは本末転倒」。

 注目され続けなければならない使命がある中でも、自分たちの成長は大前提。だからこそ、自分自身にもチームにも苦言を呈していた。「いろんな挑戦をして、それでもし負けたとしても、バッシングは自分たちが受ければいい。その覚悟はできてる。誰でも考えつくようなアイデアじゃ、この先日本は勝てない......」。宇津木の苦悩は大会最後まで続いた。

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