柿谷の決勝ゴールを生んだ即席チームの修正力

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • スエイシナオヨシ●写真 photo by Sueishi Naoyoshi

 優勝の懸かった東アジアカップ最終戦――。引き分けてもタイトルを手にできる日本に対し、韓国は勝たなければ優勝できない。また、試合間隔は韓国のほうが1日長く、ましてやソウルでの決戦。韓国が序盤から攻勢に出てくるのは想定内のことだった、と高萩洋次郎は言う。

「押し込まれるのは分かっていたし、厳しい試合になるのも分かっていた」

 だが、それにしても、一方的に攻められ続けた。

試合終了間際の決勝ゴールに大喜びする若きザックジャパンたち試合終了間際の決勝ゴールに大喜びする若きザックジャパンたち 疲労のためか、前線からのプレスが掛けられない。それでも前半はディフェンスラインを上げようとしたため、相手のディフェンダーやボランチに、ディフェンスラインの裏や、空いているサイドに正確なフィードを送られてしまった。なかでも、原口元気と槙野智章の左サイドが徹底的に狙われて、何度も危ないシーンを迎えている。その左サイドにボランチの青山敏弘が引っ張られるから、中盤の中央では山口螢が孤軍奮闘するハメとなった。すると今度は、ザックジャパンがボールサイドに人数を密集させるのを逆手にとって、韓国は大きくサイドを変えて揺さぶってきた。そこに、韓国の周到なスカウティングの成果が見て取れた。

 そうした劣勢のなか、クリアを拾った青山敏弘の振り向きざまのフィードで柿谷曜一朗が抜け出し、鮮やかな先制ゴールを奪った。

「(青山)敏くんはサンフレッチェでも(佐藤)寿人さんにああいうボールを出しているので、そのイメージが浮かびました」

 柿谷がそう語れば、「狙いどおりだった」と青山も言う会心のカウンター。しかし、リードは長く続かなかった。39分には左サイドからワンツーを使って中央に進入してきたユン・イルロクに寄せ切れず、ミドルシュートを決められてしまう。

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