日本代表初招集、豊田陽平の覚悟。「ここで選ばれなかったら...」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

 日本人FWが韓国人DFを相手にするとき、どこか気後れするところがある。敵意を剥き出しに挑んでくる韓国人選手の気迫に、思わず怯むのだろうか。綺麗なポストワークやトリッキーなドリブルは、彼らに通用しない。「削ってでも止める」といういささか粗暴な振る舞いに、フェアプレイ精神が行き渡るJリーグでプレイする日本人FWは面食らってしまうのだ。

「そこは全然、気になりませんね」

今季もJリーグでここまで12ゴールをあげている豊田陽平今季もJリーグでここまで12ゴールをあげている豊田陽平 豊田陽平(サガン鳥栖、28才)は鼻を鳴らしてそう言ってのける。

「負けている気はしないですし、むしろ突っ込んできてくれるなら裏も取れるし、やりやすいところもある。そもそも、Kリーグの関係者は僕のプレイを観て、『韓国人センターフォワードのようだ』と言っていたそうですから(笑)。自分に違和感はないです。Kリーグのチーム相手には、親善試合とかですが、結構ゴールを決めていますし」

 Kリーグの関係者が「屈強なセンターフォワードで韓国代表に欲しいくらい」と感嘆するほど、前線での立ち姿は勇ましい。筋骨隆々。ピッチに立つときの表情は、敵を睥睨(へいげい)するほどにふてぶてしい。

 そして韓国相手だけでなく、世界のどんなディフェンダーとも対峙できる、その度胸を備えている。惨敗した北京五輪、ナイジェリア戦で大会唯一の得点を決めたのは彼だった。

 プレイの特長は、とにかく横からのボールに強い。強靱でしなやかなふくらはぎと背筋を使った空中戦はアジア屈指。日本にはクロスボールに対し、機敏な動きでニアポストに突っ込めるFWは少なくないが、ファーポストに流れて強烈なヘディングを打ち込めるFWは豊田しか存在しない。ヘディングだけでハットトリックを記録するなど「空の王者」の称号がふさわしいだろう。

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