ブルガリア戦で見えたザッケローニ戦術の限界

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

試合後の会見で「良いところもあったし課題もあった」と語ったザッケローニ監督試合後の会見で「良いところもあったし課題もあった」と語ったザッケローニ監督 サッカーは、布陣ありき、でするものではない。布陣より前に固めておくべきは哲学であり、理念。戦略であり戦術だ。平たくいえば、どんなサッカーがしたいか、だ。布陣はそれがあって選択されるべきモノでなる。

 ザッケローニは何がしたくて、どんなサッカーをしたくて、3-4-3を選択することにしたのか。その点についてメディアを介してファンに伝える必要がある。

 ペルー戦、チェコ戦(2011年6月)で3-4-3を用いた時、ザッケローニは「攻撃的オプションとして考えている」と述べた。実際、イタリアで3-4-3を用いていた時(主にウディネーゼ時代)、ザックが採用した3-4-3は攻撃的なものと位置づけられていた。

 ザッケローニが日本代表監督に招かれた理由でもある。攻撃的サッカーを好む原博実技術委員長のお眼鏡にかなったからに他ならない。

 しかし、ザッケローニがこれまで日本代表で披露した3-4-3は、攻撃的なものに見えなかった。それでもザッケローニは練習などでしつこく3-4-3にトライしたが、好ましからぬ印象はぬぐえぬままだった。

 攻撃的どころか守備的になっていた。3バックというより5バックになる時間のほうが長かった。すなわち、非効率的サッカーになっていた。

 イタリアでは攻撃的サッカーで通ったものが、日本代表ではなぜ非効率的サッカーに陥るのか。これがザックジャパンの、ある時までの最大の問題だった。ところが問題はあっさり解決した。ザッケローニが3-4-3を選択しなくなったからだ。

 僕は、「あれはいったい何だったのか、時間を無駄に費やしただけではなかったのか」と追求したが、その一方で、ザックが3-4-3を選択肢の中から消したことを、それはそれで好ましく思った。絶対に成功するはずのないものを断念した判断を、文句を言いながらも受け入れていた。

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