【Jリーグ】名波浩が指摘する、最下位ジュビロの問題点 (2ページ目)
そのためにも、山田大記、松浦拓弥、そして小林裕紀という中盤のトライアングルが、各々の距離を近づけて、自分たちで攻撃をリードし、相手を崩していこうという気構えがほしい。なかでも、1ボランチの小林は、攻守のつなぎ役としての配球には顔を出すけれども、前線への仕掛けには一緒についていっていない。そこは、小林も仕掛けのスピードに乗って、前に顔を出してもいいと思う。負けている状況であればなおさらで、そういうプレイがチームに刺激を与え、攻撃のいいスパイスになっていくのではないだろうか。
また、サイドからの崩しがうまくいかず、もう一度攻撃を組み立て直す際に、ボールホルダーの選手は逆サイドにボールを運ぶ意識をもっと持ったほうがいい。同時に、逆サイドの選手もその意識を常に持っていなければいけない。そういう展開を見せておけば、逆サイドを見ながらノールックで中央にくさびパス、という仕掛けも生きてくる。結局、相手を誘うようなゲームメイクがないから、今は攻撃が単調になっている。
サイド攻撃で言えば、3-5-2の「5」の左サイド、宮崎智彦の生かし方にもう少し工夫がほしい。駒野友一がいる右サイドに比重がかかるのは仕方がないけれども、クロスの精度が高い駒野には相手のマークも厳しい。この試合でも、広島はひとりがアプローチに行ったあと、ふたり目のケアも非常に早かった。そこで、左の宮崎をどう使うかが重要になる。
宮崎は質のいいボールを蹴れる選手だから、孤立している彼をそのまま生かすのであれば、中央では常にクロスに備えた態勢を築くべきだろう。逆に、孤立させないで、左サイドで時間を作るのであれば、中央の選手がもっとサポートしなければいけない。FWの前田が下がって受けることがあったけれども、そこは中盤の山田、特に小林がもっと顔を出して、宮崎との連係で効果的な形を作ってほしい。
シュートに関しては、よく打っているし、意識は高いと思う。この日も、広島(8本)の倍の17本のシュートを放っていた。だが、苦し紛れのシュートや、独り善がりのシュートが多かった。打たなければいけないときに打たなかったこともあったし、もっとシンプルに違う選択肢を選んでも良かったな、と思うシーンもあった。
そこは、現状の流れやリズムの悪さが影響しているのだろう。そういう意味では、プレイのチョイスをいい方向に持っていくために、今選手が抱いている迷いとか、気負いというものを、一旦解消する必要がある。選手誰もが、まずはフラットな気持ちになることが大切だ。そのうえで結果が出れば、状況は一変するだろう。
ただ、現状からすれば、3バックを4バックに戻すとか、1ボランチを2ボランチにするとか、もはや戦術的な部分に手をつける時期が来ているのかもしれない。
著者プロフィール
名波 浩 (ななみ・ひろし)
1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍
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