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【なでしこ】リヨンに惜敗も、澤穂希「インパクトのある試合だった」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

「楽しかった」と、強豪・リヨンとの対戦を振り返った澤穂希「楽しかった」と、強豪・リヨンとの対戦を振り返った澤穂希 前半、リヨンはINACの出方をうかがいながらの展開ではあったが、そんなことはINACには関係ない。スキがあるなら、的確に突いていく。そして39分、前半最高の連係を見せたINACがチ・ソヨンのゴールで先制した。

 先発選手のほとんどがフランス代表というリヨンを相手に奪った先制点。「リヨンが先制されるところを初めて見た」と、大滝麻未(リヨン)が驚いた失点だったが、これでリヨンのスイッチが入った。INACがリヨンを本気にさせたのである。

 後半、リヨンのパトリス・レール監督はFWララ・デイッケンマンを投入。51分にはMFコリンヌ・フランコをピッチに送り出す。そして前線から激しくプレスをかけてINACの動きを封じていくと、INACは防戦一方に。それでもCKのチャンスにはショートコーナーから澤のシュートでゴールを狙うなど、真っ向から勝負を挑む。澤、ソヨン、川澄らで巧みにパスを交わしながら、ボールを奪おうと割って入ったルイザ・ネシブを翻弄するなど、INACらしさも失わなかった。

「自分たちのサッカーができたときもあった。試合を通してやっていて楽しかったですね。過去戦ってきた中でもインパクトのある試合でした」とは存在感を発揮していた澤だ。

 試合は80分、フランコのゴールでリヨンが同点に追いつき、延長戦へ突入。そして103分、甲斐潤子がゴール前でFWレティシア・トナッジを倒してしまいPKに。リヨンはキャプテンのソニア・ボンバスターがしっかりと沈め、これが決勝点となった。

 この試合、甲斐はスウェーデン代表エースのFWロッタ・シェリンら、スピードとパワーあふれるゴールゲッターたちを相手に全力で身体を投げ出していた。PKが決まると、ゴールに吸い込まれたボールをいち早く拾いに行ったのも他ならぬ甲斐だった。試合終了後、涙を止めることができないその甲斐の肩を近賀はずっと抱いていた。この1点だけが敗北の理由だと思っているものは誰もいなかった。

「クラブチームで(リヨンと)戦うのと、代表として(フランスと)戦うのとではやっぱり違います。自分たちのチームにどれだけの力があるのか試すいい機会になった」と試合後に澤は語ったが、一方でリヨンのトミスはこう語った。「ロンドンオリンピックで私たち(フランス代表)は日本に負けているので、この試合では雪辱を果たそうとみんなで話していました」。

 7名のなでしこジャパンを抱えるINACは、リベンジを果たすべき相手としてリヨンの選手たちの目に映っていたのだ。選手全員がプロ契約であるヨーロッパチャンピオンとしての意地、そしてフランス代表としての意地。INACが「世界を相手に自分たちの力を試したい」と思う強さに対して、「ヨーロッパ女王として、そしてフランス代表として、1年に2度も日本のチームに負ける訳にはいかない」というリヨンの誇りにも似た強さが勝った試合だった。

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