【なでしこ】成長を示せるか?リヨンの大滝麻未がロンドン五輪の戦友と対決 (2ページ目)
しかし、トレーニングとなれば彼女たちなしでは、紅白戦すら組むことができない。もちろん、常にベストに近いパフォーマンスをしていなければ仮想"フランス"、"ブラジル"、"アメリカ"といった強豪国の敵役は務まらない。大滝にはすさまじい葛藤があった。チームメイトとの距離感をつかめず、困惑が滲んでいた大滝の姿が今でも思い出される。
そんな大滝を始め、バックアッパーの4人に変化が表われ始めたのはなでしこジャパンが決勝トーナメントに進出した頃のことだ。4人でお手製の応援用のボードも作った。ゴールを決めたら、「みんなサイコー」と書かれたメッセージボードを遠く離れた関係者席から目一杯掲げた。なでしこたちがピッチでの喜びの後、ガッツポーズを捧げるその視線の先には彼女たちがいたのだ。
銀メダルを獲得する仲間たちの活躍に、「次は自分がそこに立ってプレイしたい」と、自らが成長することをかたく誓ったロンドン五輪だった。
あれからわずか3カ月――「こんなに早く日本で、しかもまさか対戦相手として(大滝と)対決することになるとは思わなかった」試合後、こう語ったのは、大滝と同じバックアッパーとしてなでしこジャパンを支えた有吉佐織(ベレーザ)だ。
この日、有吉はベレーザの右サイドバックとして、欧州女王のリヨンに挑んでいた。その隣にはなでしこジャパン不動のCB・岩清水梓がいる。しかし、リヨンのスピードと鋭い切り返しによる巧みな攻撃力の前に、立ち上がりから立て続けに失点を喫してしまっていた。
「自分のミスからの失点。このままで終わる訳にはいかなかったし、自分たちの時間もあった。5点も入れられてナンなんですけど(苦笑)、終わった瞬間は『楽しかった』って思えました。できなかったこともできたことも含めて、この試合に入る前と今とでは、全然違いますね」(有吉)。
前半で大量3点のリードを奪ったことで、後半に入るとリヨンが主力を休ませ始めた。大滝がピッチに登場したのは試合が決した後、63分のことだった。大学サッカーでゴールを量産できても、欧州リーグではそう簡単にいかない。世界屈指のクラブチームにいる大滝はベンチを温めることが多い。それでも、凱旋試合で巡ってきた出場のチャンスになんとか結果を出そうとした大滝は......空回りした。
「最初はガチガチでした(苦笑)。気負っちゃいましたね。いいところを見せたいって。本当に日本の選手はうまい! フランスとはまた違ったうまさがあります。もうちょっと出たかったというのはありますけど、勝ててよかったです」(大滝)。
ビックチャンスもあった。交代でピッチに入ってしばらくして、中央でボールが大滝の足元に入った。しかし、すぐにベレーザDFに囲まれた。最初にプレスに行ったのは有吉だった。「あれは決めないといけないですね」とは大滝。意地と意地とかぶつかった瞬間だった。試合は5-2でリヨンが勝利をおさめた。終了後、有吉の姿を見つけると大滝の笑顔がはじけた。「おつかれ! がんばってね」と有吉が言葉をかけた。「特別に対決を意識してた訳じゃないんですけど、でも、こうして(同じ五輪バックアップメンバーだった有吉と)戦えてうれしかったです」(大滝)。
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