【名波浩の視点】ザックジャパンのさらなる進化に欠かせない選手とは? (2ページ目)

  • 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

 本田の不調で攻撃もなかなか思いどおりには展開できなかったが、国内組の遠藤保仁や今野泰幸、前田遼一らは非常によく動いていて、攻守両面でチームを支えていた。そのうえで、若い清武弘嗣や酒井宏樹が躍動感あふれるプレイを見せ、彼らには「何かをやってやろう!」という気持ちがあった。その前向きな姿勢からチャンスが生まれ、厳しい環境の中でも、頭で考える前に体が先に反応していた選手がゴールシーンに絡んで結果を残した。

 日本代表はこれで2012年の全日程を終えたが、オマーン戦のような苦しい試合をしぶとくモノにできたということを考えれば、この1年の成長ぶりは十分にうかがえる。守備では、GKの川島永嗣はもちろん、最終ラインの今野を中心によく統率されてきた。特に、危険察知能力という部分においては、かなりレベルが高くなった感がある。

 攻撃では、流動性がある中でのバリエーションが増えてきた。オマーン戦ではコンディションの問題もあって、なかなかいい形は作れなかったけれども、今年1年、あらゆる展開からゴールシーンが生まれていた。0-4で完敗したとはいえ、欧州遠征のブラジル戦でもいろいろなパターンの攻撃を仕掛けて、そのレベルは非常に高かったと思う。

 あとは、岡崎慎司のような、ここ一番で力を発揮できる選手が、もうひとり、ふたりいるといい。相手にとってものすごく嫌な動きをして、敵の背後のスペースをとれる選手がもっと出てきてほしい。

 そういう意味でも、来年以降、重要なポイントとなるのは、チームにフィットする新戦力がどれだけ出てくるか。オマーン戦でも酒井宏樹や酒井高徳が自らの存在をアピールしていたけれども、彼らが一層存在感を増してチームにはまってくれば、競争力が生まれてくる。そうすれば、チームが活性化して、よりレベルアップしていくだけに、その辺はこれまで以上にクローズアップされるべきだし、自分も注目していきたい。

 とりわけ、新戦力として期待するのは、2列目の選手。清武や乾貴士ら、能力のある若いタレントたちがどれだけ伸びてくるか。本田、岡崎、香川真司らの2番手として、彼らを脅かすような存在の選手がどんどん出てくれば、攻撃のバリエーションがますます増えていくと思う。そのためにも、今注目されている若い選手たちは現状に満足することなく、さらなる高みを目指してほしい。

プロフィール

  • 名波 浩

    名波 浩 (ななみ・ひろし)

    1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍

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