【Jリーグ】史上初のJからの降格。プロクラブとして存在価値問われる町田

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 日刊スポーツ/アフロ●写真

J1昇格を決め喜ぶ湘南イレブンと、それを呆然と見つめる町田の選手たちJ1昇格を決め喜ぶ湘南イレブンと、それを呆然と見つめる町田の選手たち 11月11日、J2リーグ最終節。FC町田ゼルビアの選手、スタッフ、そしてサポーターは冷たい雨に濡れていた。最下位のクラブとして、在籍たった1年でJリーグから降格する現実が目の前にあった。

「なにが悪かったんだよ!」

 クラブ社長の挨拶に、サポーターが怒気を含んだ声で問う。行き場のない感情が行き交い、雨脚は強くなった。ミックスゾーンに出てきた選手たちは口々に、「申し訳ない」「整理がつかない」「悔しいです」と謝罪と困惑と不甲斐なさが入り混じったコメントを繰り返していた。

 取材の合間、携帯電話に着信があった。

「試合前は、やっぱりえずいちゃいそうでしたよ」
 ガイナーレ鳥取のMF鶴見聡貴が電話の向こうで話した。

「始まってからすぐに失点して、"負けパターンじゃん"って焦りました。福岡の選手は個人の能力は高いから、プレスに行ってもまったくはまらず。でも、みんなが右サイドで作ってくれたチャンスをなんとか押し込めて......リードされたままだったら、ずるずる行っていたかも。実は町田の試合の結果は知らされていなくて。だから終わってみて、"町田は0-3だったのかよ"って一気に肩の力が抜けましたね」

 緊張状態から脱した安堵感が伝わってきた。この日、鶴見は貴重な同点弾を決めたが、腹を括(くく)っていたという。なにが起きてもおかしくない状況だった。最下位の町田は最も有力な降格候補だったが、21位の鳥取、20位のFC岐阜の選手、クラブ関係者も戦々恐々。実際、岐阜は最終戦で横浜FCに敗れ、町田が大量得点で勝利していれば、逆転劇が起きていただろう。

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