【なでしこジャパン】チームに加わった最後の1ピース、大儀見優季

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Hayakusa Noriko/JMPA

ブラジル戦で1ゴール1アシストと結果を残した大儀見ブラジル戦で1ゴール1アシストと結果を残した大儀見 なでしこはひたむきさでブラジルから白星を勝ち取った。劣勢に立たされながらも最後の粘りで逆に相手を精神的に追いつめる戦いぶりは、なでしこらしさそのものだった。
 
 もはやディフェンスリーダーの風格さえ漂う岩清水梓が言う。

「やりながら去年のアメリカ戦を思い出しましたね。ひたすら耐えながら、ここを耐えたら先が見える、という感覚がよみがえったというか」
 
 個の能力でやられても、ボールポゼッション率で下回っても、それでも走ることで数的優位を作り出し、ピンチを最小限に食い止める。最終ラインとゴールキーパーは体を張り、ゴールを割らせなかった。

 試合終了後、なでしこたちは大会入りして初めて大喜びをしてみせた。誰に何と言われようとも、なでしこらしさの一要素である巧みなパスワークを披露できなくても、何より必要だった勝利を手に入れた。喜びつつも、宮間あやは気持ちを引き締めた。

「自分たちが優勝して当たり前だと思っていたら、この勝利でホッとしているかもしれない。でも私たちは挑戦者。一番良い色のメダルが欲しいので、そこに向かうだけ」 

 その言葉に、選手たちの意思は集約されている。

 ブラジル戦では無失点に抑えた守備もさることながら、90分で試合を決め切れたことがW杯との大きな違いだ。中でも大儀見優季の復活が、日本の攻撃陣を支えている。

 昨年のW杯では力を発揮し切れずに1得点。圧倒的な能力と経験を持ちながらも、自分のプレイに固執した。ストライカーはこうあるべきだという信念も強く、守備に力を割くのはゴールに向かう力を削ぐものだと考えていた。

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