【日本代表】鈍足だった岡崎慎司、躍進の原動力は「走りの進化」にあり (3ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 FWは1歩の出足の鋭さがあれば、相手DFの前に体を入れられる。岡崎のようなタイプの選手に100m11秒台のスピードはいらない。勝負の瞬間は3歩、つまり5mの距離だ。そこでトップスピードに乗る動きが自然にできれば、力むことなくシュート体勢にまで移れる。すべては「走りの動き」にかかっているのである。

 今後、岡崎のプレイを見る際には動き出し、特に最初の一歩目が大きく前に振りだされているか、そして地面についている支持足が曲がることなく、真っすぐ地面を押し込めているかを見て欲しいと杉本氏は言う。これは100mの世界記録保持者ウサイン・ボルト(ジャマイカ)、そしてFCバルセロナのリオネル・メッシにも共通した動作。岡崎自身がイメージ通りに動けているかどうか、コンディションのバロメータがここなのだ。

「今後はポジション取りの質についても、もっと高めていけるはずです。常に最短距離を走れるようになれば、彼の代名詞でもあるダイビングヘッドをしなくてもシュートできる位置まで動けるはず。この効率性を考えて走る技術が上がれば、ザックの戦術にもさらにフィットしてくるでしょう」
 
 目指す走りに対し、完成度はまだ8割程度。現時点での岡崎は接触プレイを厭(いと)わない姿勢、全力でボールを追う運動量から、「泥臭い」といった印象が強いが、理想の走りに近づいていけば、「泥臭さ」だけでなく、当たり負けしない「強さ」や一瞬の「キレの鋭さ」といったイメージも備わってくるに違いない。

 岡崎のさらなる進化に注目である。

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