【なでしこジャパン】成長を実感。DF熊谷紗希がアメリカ戦でつかんだ手応え

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

キリンチャレンジカップのアメリカ戦。ワンバックと互角にわたりあった熊谷紗希キリンチャレンジカップのアメリカ戦。ワンバックと互角にわたりあった熊谷紗希
 危険な芽を早めに摘もうと前に出れば、それを逆手に取られてあっさりとDFライン裏のスペースをつかれる。徐々に間延びしていく中盤。ラインを上げたい守備陣だが、相手のスピードに押し戻される。最終ラインは制御不能に陥った。

 これは、わずか1年足らず前の5月、ワールドカップ前のアメリカ遠征で、日本がアメリカ代表に2連敗したときの象徴的な1シーンだ。

 選手たちは、このアメリカとの2連戦での教訓を今も忘れていない。その後のワールドカップ、アルガルベカップ、そして今回のキリンチャレンジカップ。この教訓は大いに生かされた。1年前の完敗からもたらされた数々の修正点は、現在のアメリカ対策、果ては個々の課題、チャレンジへと多大な影響力を持っているのである。

「あのときのワンバックは衝撃的だった」
 と熊谷紗希は振り返る。

 現在、熊谷は個で当たり負けしないコンタクトスキルを身につけるため、ドイツの名門であるフランクフルトに籍を置く。世界屈指のフィジカルプレイが展開される中で学びの日々を送っているのだが、不安もあった。

「なでしこの守備は連携が命。ドイツでプレイすることで、個の強さを手にできたとしても、"なでしこの連携"という部分でズレが出るかもしれない」

 すべて覚悟のうえの移籍だった。なでしこに合流して、連携の感覚を取り戻すまでに最短でどれだけの時間が必要なのか、熊谷自身にもわからなかった。アルガルベカップで、それは確かめることができた。

「思ったより違和感はない。できる」

 しかし、アルガルベカップでは多くの選手がテスト起用をされていたため、連携面では大きなミスも出た。失点も重ねた。問題は山積みだったのだ。

 そして、今回のキリンチャレンジカップ初戦。空中戦でワンバックの高さにも堂々と対抗し、1対1の勝負ではモーガンのスピードに合わせながら、最後は狙いを定めたタックルで確実にボールを奪う熊谷の姿があった。

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