【Jリーグ】浦和・ペトロヴィッチ監督
「横にボールを運んだって、そこにゴールはない」

  • 小齋秀樹●文 text by Kosai Hideki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

2012年シーズン序盤戦。新監督の明暗(2)

レッズの再建を託されたペトロヴィッチ監督。リーグ戦では2勝1敗とまずまずのスタートを切った。レッズの再建を託されたペトロヴィッチ監督。リーグ戦では2勝1敗とまずまずのスタートを切った。『ミシャ』こと、ミハイロ・ペトロヴィッチ。2006年6月から昨季2011年シーズン終了までサンフレッチェ広島の指揮を執った彼が、浦和レッズの監督となり、チームが始動してから2カ月余りが過ぎた。

 彼が志向するのは、攻撃的なサッカー。システムは3-4-2-1で、3バックも前へ出て行くことを求められる。リスクの高いサッカーだ。

 1月20日にチームは始動したが、2日目には早くも昨年までとの違いが明確に打ち出された。ゲーム形式での練習を見つめていた監督が語気を強めて言う。
「バックパスばかりするんじゃない」

 その後、選手たちのバックパスの数は減ったが、代わりにサイドの選手へボールを付ける回数が増える。

「サイドに逃げるな!」と、再び監督の声が響いた。後日の練習でも、「横に横にボールを運んだって、そこにゴールはないよね? ゴールがあるのは前だよね?」と、選手たちに問いかけていた。

 バックパスと横パスの多さは、近年のレッズのサッカーの大きな特徴だった。特に2009年にフォルカー・フィンケが監督となって以降は、顕著となった。ボールを保持して複数の選手のコンビネーションで相手守備を崩そうとするフィンケのサッカーにおいては、ボールを失わないことの優先順位が非常に高かった。彼が指揮した2年間で、ボールポゼッションの一部分に関しては、選手たちの能力は向上した。だが、ボールを回すことはできるようになったものの、退いた相手を崩せないまま終わる試合も増えていった。フィンケの後に就任したゼリコ・ペトロヴィッチも、ボールを縦に運ぶ有効な方法を選手たちに身につけさせることはできなかった。

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る