【名波浩の視点】五輪代表を一変させ、チームの「肝」となったふたりの選手 (2ページ目)

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 また、シリア戦では物足りなかったサイド攻撃も光っていた。右サイドからは、酒井宏樹が果敢に攻め上がってチャンスを作った。あれだけ頻繁に前に出てきてくれたら、前線の選手たちはかなり助かったと思う。

 一方で、そんな酒井の攻撃参加も、前線の選手たちのサポートのおかげ。齋藤がいいポジションをとったり、東や原口ら2列目の選手が流動的に動いたりして、飛び出してくる選手が相手に捕まらないように気を配っていた。選手個々はもちろん、各グループにおいて、しっかりと共通認識が図れていた。

 1点目のゴールシーンは、まさに象徴的。齋藤にボールが入った瞬間、酒井は一気に駆け上がっていったけれども、齋藤はそれを意識しつつも、中央の東へのパスを選択。そこでマレーシアDF陣は、完全に意識が真ん中へと集中してしまった。その後、東は時間を作りながら持ち上がって、原口がゴール前に入ってくるのを待ってからタイミングよくスルーパス。最終的に原口が粘ってこぼれたボールを、マレーシアDF陣がノーケアだった酒井が押し込んだ。とても意図のあるつなぎで、意図のある突破だった。

 この試合で強いて苦言を呈すならば、4点目を取って落ち着いてしまったこと。どれだけ点を取っても、決して満足してはいけなかった。さらに5点目、6点目と取りに行かなければいけないし、たとえ10点奪っても11点目を目指してどん欲に攻めなければいけない。マレーシアに、日本とはもう戦いたくないと思わせるほど、完膚なきまでに叩きのめそうというスタンスであるべきだった。結局その後、シリアはバーレーンに敗れたけれども、もっと点を取っていれば、試合前のシリアに与えるダメージも相当なものだったと思う。

 さて、再び首位に浮上した日本。最終戦は、引き分けでも五輪切符を手にする。しかしこのまま油断することなく、最後のバーレーン戦でも気持ちよく勝利して五輪本番に向かってほしい。

 このチームなら、それは難なくできるはず。関塚隆監督が推し進める方向性にブレがなく、ピッチの選手たちもそれをきちんと具現化してきた。そのうえで、試合を消化するごとに選手たちは微調整を重ね、臨機応変さとか柔軟性が身についてきた。4戦目のシリア戦こそ苦しんだが、あれがいい薬になって、マレーシア戦では「気迫」と「技術」、そして「頭脳」で90分間を通して敵を圧倒した。その三拍子がそろっていれば、バーレーンがどんなにいいコンディションを作ってきても、日本には太刀打ちできないだろう。

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