【JFL】日本サッカーを救った男・我那覇和樹のリスタート。「やりきる自信が出てきた」 (4ページ目)

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko
  • photo by Kimura Yukihiko

――では今季はコンデティションが上がって実質的なリスタートでしょうか。もう一度、Jの舞台で我那覇選手を観たいというのは多くの人が思っている。目標に掲げるものは何でしょうか。
「チームとしてのJ昇格が大きいですね。それには沖縄県民の後押しがないと厳しいので、僕らはそうしてもらえるように結果を出していきたいです。沖縄の選手は身体能力が高いというのはスカウトの方も言われるんですが、見てもらう機会が少ないので、どうしても県外に出てしまうケースが多いですからね。そのためにも僕らFC琉球が昇格してあとの世代に道筋を作ってあげることが使命かと考えています。そうしたら、才能のある子どもたちも県外に出ずにFC琉球を目指してくれると思うんです。僕はチームの勝利に貢献できるゴールをたくさん取ってカテゴリーを上げたいですね」

 
 2月6日、FC琉球は我那覇和樹を新キャプテンとしたことを発表した。松田岳夫監督の指名であるという。この我那覇を永井秀樹と寺川能人、そして高橋駿太が副キャプテンとしてサポートする。翌7日、FC東京とのトレーニングマッチに出場した我那覇は45分、45分、30分の変則マッチの2本目の途中まで出場。試合は天皇杯王者に2-8で屈するもFC東京関係者に「我那覇の足元は(ボールが)収まる」と好印象を与えた。

 今年から青赤を率いるランコ・ポポビッチ監督は、オシム譲りのユーモアを交えて「あれだけの選手、ただ年金をもらうために琉球に来たんじゃないだろう? 周囲に経験を伝えながらJに上がって来て欲しいし、今日見た彼の振る舞いやスタイルに期待を持っている」とコメントした。

「今日はFC東京の良いサッカーだけが目立ってしまいましたね。ボールも人も動いて......。自分ももっとやらないといけない」。我那覇は悔しげに言葉少なく謙虚に振り返った。

 キャプテンとしての意志が端整な表情に滲んでいた。


 我那覇の選手としての本当の戦いがこれから始まる。もうひと泡もふた泡も吹かして欲しい。JFLが開幕したら、FC琉球はそれこそ日本中で試合を行なう。ぜひ会場に足を運んで声援を送り、願わくば他チームのサポーターも我那覇を見かけたら、大きなブーイングの後に「日本のサッカーのためにありがとう」と小さく控えめにひと声かけていただきたい。

『争うは本意ならねど ドーピング冤罪を
晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール』
集英社インターナショナル 1575円

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2007年5月、川崎フロンターレの我那覇和樹はドーピングを理由に6試合出場停止の制裁を受けた。しかしそれは、ドーピングコントロール委員会の事実誤認によって作られた冤罪だった。なぜそのようなことが起きたのか? 渾身のノンフィクション。

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