【Jリーグ】松田直樹追悼メモリアルゲーム開催で「真剣なプレイを」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

「マツのために、真剣なプレイをしたい」

 出場が予定されている選手の多くが、そう語っている。もちろん公式戦ではないのだが、OB選手たちの多くも体を絞って参加する意志を語っており、かなり際どい場面もあるかもしれない。

「スタジアムの歓声が伝わってくると、自然に燃えるんだよね。やってやるよ、って。そんな時はどうしようもない気持ちなる」

 松田はプレイの昂揚感を饒舌に語っていた。彼は、誰よりもスタジアムで生きていることを実感していたのだろう。サッカー選手としての熱い思いは、今も多くの人々に受け継がれている。

「マツさんがいたからこそ、自分たちは変われたと思う」

 2011シーズン、Jリーグに昇格した松本山雅の選手たちは、松田に対して感謝の言葉を惜しまない。山雅の選手たちの多くは、Jリーグのクラブで戦力外通告を受け、下部リーグを渡り歩いてきた。ドロップアウトしかけた選手たちの心を、松田は動かし、踏みとどまらせ、目覚めさせ、果ては"変身"させたのである。

「サッカーしかないからさ、俺には」

 松田の呟きが思い出される。不器用な男は、サッカーというツールでしか自分の人生を表現することができなかった。しかし器用ではなかったからこそ、彼のサッカーに対する純粋な気持ちは多くの人の気持ちに訴えかけ、この世から消えた今も深く愛されている。

 1月22日。松田が幾度も戦いを繰り広げた日産スタジアムで、かつての仲間たちがボールを追う。心を揺さぶる瞬間が、そこにあるはずだ。


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