GKは、仙台の林卓人。
楢崎正剛(名古屋)や川口能活(磐田)、そして菅野孝憲(柏)もいいパフォーマンスを見せてくれたけれども、なんと言ってもリーグ最少失点25という数字が立派。(20試合以上出場の)GK防御率1位(0.74。2位:楢崎=1.05)、GKセーブ率も1位(77.1%。2位:楢崎=76.0%)で、こうした数字は十分に評価されるべきものだと思う。もちろんチーム全体の守備力が高く、林ひとりのがんばりではないとはいえ、彼の果たした功績は計り知れない。凡ミスもなくなって、守護神の安定ぶりが、チームの成績につながったのは間違いない。Jリーグアウォーズのベストイレブンは楢崎だったが、今季は林が選ばれると思っていた。
DFは、名古屋の闘莉王、柏の酒井宏樹と近藤直也。
闘莉王は相変わらず、彼ひとりで勝ち点10を持っているな、と思わせるだけの活躍を今季も見せてくれた。また、彼がいるといないとでは、チームの”締まり”が違う。闘莉王がピッチに立つことで、チーム全体にピリッとしたムードが生まれる。中心選手としての自覚があって、統率力という点ではJリーグ随一だ。そういう意味でも春先、彼が負傷などで出場できなかった試合があったのは、本人にとってもチームにとっても口惜しいだろう。ダニルソンが戦列を離れていたし、あれがなければ、勝ち点1もしくは2くらい上乗せして、逆転優勝していたかもしれないだけになおさらだ。
酒井は、アシスト数(7)からもわかるとおり、クロスの精度の高さが際立っていた。ミスが少なく、非常に”生きたボール”が多かった。守備に関しても、1対1の勝負でフィジカルの強さが光っていた。特に浦和戦で、最初の対戦では原口元気にやられている印象が強かったものの、最終節では原口の突破をほぼ完封。優勝に大きく貢献した。負けん気の強さも見せ、まだまだ伸びていく選手だと思う。
ひとつ求めるならば、クロスの本数をさらに増やしてほしい。その数は、磐田の駒野友一がずば抜けていて、酒井とは総本数で100本以上の差がある(※クロスのシーズン総本数/1位:駒野=247本、9位:酒井=109本)。1試合にして3~4本の差があるだけに、駒野までとは言わないが、クロッサーとして酒井にも高い数字を目指してほしいと思う。
安定感が増した近藤も、ネルシーニョ監督からの信頼が厚く、柏の優勝に貢献したひとり。アジリティーのある選手だから、若い頃はマークを多少ルーズにしていても対応できるといった自信を持っていて、身体能力でボールを奪っている感があった。それが、今ではそうした曖昧な対応がなくなり、相手との駆け引きもうまくなった。そのうえ、ボールのつなぎにしても、とてもシンプルかつ正確に攻撃陣へとはたけるようになって、すごく成長したと思う。
MFは、柏のレアンドロ・ドミンゲスとジョルジ・ワグネル、名古屋の藤本淳吾、C大阪の清武弘嗣、そして……。
レアンドロは、まさにスーパーだった。助っ人外国人としては、ここ数年ではピカイチの存在。点がとれて、アシストができて、攻撃の起点になれて、自ら受け手として走れる選手。こんな選手は、なかなかいない。かつて柏で活躍したジャメーリ(1997年)のようなタイプだけれども、彼よりもゴールへの意識が高い。加えて、ファンタジーな選手だったジャメーリに比べて、非常に堅実で、それでいて意外性がある。さらに、ネルシーニョ監督の指示を忠実に受け入れる勤勉さがある。文句なしのMVPだ。
開幕当初サイドバックをやっていたジョルジは、中盤にコンバートされそうなとき、2、3試合ベンチにいることがあった。それについてネルシーニョ監督は「日本サッカーをもう少し勉強してほしかった」というニュアンスの話をしていたけれども、あの期間がとても有効だったのではないだろうか。あそこでピッチの外から柏のサッカーを見ることで、レアンドロとの兼ね合いだったり、2ボランチの大谷秀和や栗澤僚一らとの連係だったりを把握し、自分自身の中で築き上げた感じがする。同時に、ジョルジにとっては、ボールを収めて運べる橋本和が頭角を現したことも大きかったと思う。
また、キッカーとしてセットプレイでも大きな武器となったし、意外性のあるシュートで何度となくチームを勝利に導いた。第32節の清水戦でゴール前のFKを3本くらい壁に当ててしまったとき、試合後のロッカー室で泣いていたらしいけど、それほどのチーム愛があって、自分のプレイに対する責任感もあるというのも、称賛に値する。
今季から名古屋に移籍した藤本は、さすがに春先は苦しんでいた。チームを生かすには自分はどうすればいいのか、自分が生きるにはどうやってチームの歯車になればいいのか、といった葛藤があったと思う。それでも夏前には自分の居場所を見つけて、完全にチームにフィットし出してからの活躍は圧巻だった。
特に4-1で勝利したホームのガンバ戦(第29節)では、ゲームを作りながら、自らゴールまで持っていくシーンが再三あった(2ゴールを記録)。そうしたゲーム作りとフィニッシュを兼ね備えたプレイという意味では、今季の日本人では藤本と清武が抜けた存在だった。それに、いかに相手のプレッシャーをかわしてボールを受けるか、という点においても今年はさらにクオリティが上がったと思う。
清武は今季いちばん衝撃を与えてくれた選手。本人は数字的にまだまだ物足りないと思っているかもしれないけど(7得点8アシスト)、インパクトのあるプレイをふんだんに披露。アジアチャンピオンズリーグや五輪代表、そして日本代表の試合を含めて、印象的なゴールやアシストがたくさんあった。Jリーグでは、アウェーの川崎F戦(第20節)で倉田秋に出したスルーパス。25mくらいのロングパスで、グラウンダーで相手の最終ラインを切り裂いていった。あれは最高だった。
とにかく清武は、香川真司同様、プレイが止まらないところがいい。プレイを連続しながら、意外性のあることをやってのけてしまう。ハイプレッシャーの中でも結果を出せるし、日本サッカーにとって、まさに希望の光だと思う。
MFにはもうひとり、G大阪の遠藤保仁を加えたい。後半戦は足の痛みもあって、彼の魅力であるセットプレイを蹴っていないだけに選出するかどうか迷ったが、そんなコンディションの中でも、ゲームを作っていたし、Jリーグアウォーズでもベストイレブンに選ばれたのは、選手の多くが遠藤の力を認めている証拠。G大阪が3位という成績を残したのも、やはり遠藤の存在があったからだと思う。
遠藤の良さは、将棋に例えると、王を取るところがゴールで、王手がアシストとするなら、その1手前とか2手前で決定的な仕事をすること。そこでのプレイが飛び抜けて光っている。日本では、そんな特徴を持った選手は見当たらない。鹿島の小笠原満男を似たようなタイプに挙げる人もいるが、彼はゴールに直結する、いわゆる王手となるパスが好きなタイプ。スルーパスで決定機を演出する中村俊輔とも違うし、遠藤はまさに他に類を見ない選手。来季はベストコンディションでシーズンを通して活躍してほしい。
FWは、甲府のハーフナー・マイク、名古屋の玉田圭司。
まずハーフナーは、どちらかといえば守備的なチームの甲府で、クロスの数や前線へ出てくるパスが他のチームと比べて決して多くない中で、17ゴールを記録したことが何より評価できる。それに、対戦相手とすれば「ハーフナーだけを抑えればいい」という戦い方をしてくる。それでも、これだけの数字を残しているのだから、本当に素晴らしい。
本人も話していたけど、ゴールへの意識、点を獲りたいという意識がより強くなったのが、結果を出せるようになった要因だろう。また、鳥栖、甲府とチームを移籍していく過程で、いろんな経験を積んで点を取るためのヒントをつかんできたのではないだろうか。ゴール前でファーサイドに逃げるのか、トップスピードでニアに飛び込むのか、そういう判断の質が上がって、相手との併走や競り合いの中で自分の持ち味であるリーチをうまく利用した得点が増えたと思う。
玉田に関しては、今が彼にとってのキャリアハイだと思う。もともとスピードがあって、ボールキープ力もあって、左足の精度が高い選手だけれども、柏にいた頃や名古屋に移籍してきた当時は、対戦相手が彼のそうした特徴を消しに来たときに、個で打開しようするイメージが強かった。それが、ヨンセンやケネディといったターゲットマンを得ることで、本当の自分の生き方、生かし方というものが徐々にわかってきたのではないだろうか。それは、他の中盤の選手たちとの関わりでも一緒で、個を生かすための、周囲との”融合性”というものを彼自身の中で見いだしたように感じる。
結果、それまではシーズンふた桁得点というのは少なかったけれども、昨季13得点で、今季はそれをさらに上回る14ゴールを記録した。それも、美しいゴールが非常に多くて、しかもそのゴールが偶然ではなく、狙ってやっていそうな雰囲気がある。それが、すごくいいし、たまらなく好きだ。
この他、FWでは8年連続ふた桁得点を記録した佐藤寿人(広島)や、空間認知能力に優れた赤嶺真吾(仙台)らも入れたかったし、他のポジションでも惜しくも選出できなかった選手はいっぱいいる。なかでも、今回4人選出した柏勢は人材がズラリ。MFの大谷や栗澤などは、Jリーグアウォーズでベストイレブンに選ばれても不思議でないほどの活躍を見せ、今季の柏はまさしく優勝するに相応しいチームだったと思う。




















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