J Football 名波浩の視点

[2011年12月05日(月)]

【名波浩の視点】Jリーグ総括。柏を優勝に導いたネルシーニョ監督は何がすごいのか?

  • 山添敏央、藤田真郷●撮影 photo by Yamazoe Toshio,Fujita Masato

柏の優勝は、ネルシーニョ監督の手腕なくして語れない。 今季のJリーグを制したのは、J2から昇格したばかりの柏レイソルだった。ジョルジ・ワグネルなど的確な人材を補強して多少のマイナーチェンジはあったものの、J2時代と変わらぬサッカーをシーズン通して実践。組織力のあるモダンサッカーで、見事頂点に立った。

 開幕戦の清水エスパルス戦もそうだった。J2時代同様、攻撃の核であるレアンドロ・ドミンゲスを生かす戦い方で、3-0と快勝。その完勝したゲーム内容を思い起こせば、頂点に立ったことは何ら不思議なことではない。ただ当時は、さすがにJ1での戦いとなれば、どこかで”壁”に当たって、必ず苦しい状況を迎えると思っていた。それだけに、この結果は驚きに値する。

 最大の要因は、やはりネルシーニョ監督の力量だと思う。

 ゲーム戦略はもちろん、選手交代やシステム変更の巧みさも長けていたが、特筆すべきは、調子のいい選手の見極め、だ。シーズンを振り返ってみても、レギュラーとして考えていたのは、おそらく数人。それ以外のメンバーはいつも流動的だったと思うのだが、試合ごとのメンバー選出のジャッジが本当に素晴らしかった。

 さらに、そうやって常に選手たちに競争意識を植え付けたことで、チームが活性化。選手層の厚みが増して、シーズン中盤から終盤にかけても、チーム力が落ちることがなかった。内容のともなったゲームも多く、何より連敗しなかったのは大きい。

 結果、選手たちもどんどん自信をつけていった。アウェー(6月11日)、ホーム(8月6日)ともに2-0で快勝した横浜F・マリノス戦や、タフな試合を勝ち切った鹿島アントラーズ戦(7月23日)などは、ゲーム内容もよく、「自分たちがいる場所(首位)が決してフロックではない」と、選手たちも実感できる試合だったのではないだろうか。

 攻撃では、とにかくレアンドロ・ドミンゲスがずば抜けていたが、周りでサポートする選手たちとのバランスやメリハリも良かった。特に前線で動き出す選手との兼ね合いがスムーズで、北嶋秀朗をはじめ、田中順也、工藤壮人らはローテーションで起用されながらも、試合に出たときは自分の役割をきちんとこなしていた。加えて、林陵平や澤昌克らを含め、前線のコンビは何パターンも考えられるだけに、監督としては使い勝手がよく、彼らの存在はとても頼もしかったに違いない。

 守備に関しては、決して失点が少ないほうではないものの、選手間のコミュニケーションと距離感がよかったので、かなり強固だった。どんなボールでも弾き返してしまうとか、とてつもなく危険回避能力に優れているとか、決してスーパーな選手がいるわけではないが、選手それぞれが足りない部分を補い合って守り抜く、総合的な力が光っていた。

 一方、最後まで柏と凌ぎを削った名古屋グランパスとガンバ大阪も、優勝を争うに相応(ふさわ)しい戦いを見せてくれたと思う。

 名古屋は、自分たちの置かれている立場というものを理解している選手が多く、シーズン終盤になればなるほど、いい働きをし、夏場から一気に盛り返してきた。厳しい戦いの中でもセットプレイで点を取ったり、最後はしぶとく守り切ったりと、名古屋らしい勝ち方を披露。今季から加入した藤本淳吾がフィットしてからは完全に波に乗った。第29節でガンバに4-1で快勝した試合は、そのことを証明する象徴的な試合だったのではないか。

ガンバの攻撃サッカーを築いた西野監督。 ガンバも最後までガンバらしい攻め切るスタイルを貫いた。特に、西野朗監督の“采配の速さ”には目を見張るものがあった。最終戦でも勝っている状況でスパッと選手を代えて、その特徴が顕著に出ていた。こうした采配ができる監督のもとでプレイできた選手たちを、とても羨ましく思う。

 それはつまり、西野監督は外から見ていてピッチ内のリズムの悪さというものをすぐに察知してくれるということ。そのうえで、すかさず選手交代という明確な行動を起こして対処してくれるのは、選手にとってはありがたい。もちろん代えられた選手は腹が立つだろうけれども、チーム全体としては、ものすごくわかりやすい対処法をとってくれるわけで、トータルで考えれば、その効果は計り知れない。

 他では、4位のベガルタ仙台が、震災からの復興のシンボルとして、素晴らしい成績を残した。圧巻だったのは、リーグ最少失点(25)の守備。際立っていたのは、帰陣の速さだ。ボールを奪われた瞬間、すかさず戻ってブロックを作るのが、本当に素早かった。そのコンセプトが、選手みんなの意識に浸透していて、オートマチックに実践されていた。

 翻(ひるがえ)って、期待はずれに終わったのは、鹿島アントラーズ。新たに補強したFWカルロンが不発に終わったことが何より痛かった。加えて、主軸である小笠原満男が年間を通してコンディションをキープできない状況にあったし、得点源として期待された興梠慎三も結果を出したい気持ちは伝わってきたが、実際の数字にはそれが表れなかった。いろんな意味で、建て直しを図らなければいけないことがたくさんあると思う。

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