【ゴルフ】苦節10年。前田陽子に光を与えた「師匠の言葉」 (3ページ目)

  • 古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki
  • photo by Getty Images

 この、自らの“甘え”を断ち切るために、前田はひとつの決断をした。それは、「ゴルフ以外のことで生活費を稼ぐ」ということだった。それで始めたのが、地元にある製紙会社のダンボール工場で働くことだった。

「自分に“やる気”を出させるために、あえてゴルフを離れた仕事で生計を立てようと思ったんです。それも、人を相手にするのではなく、モノを相手に黙々とこなす仕事をやれば、(ゴルフに対して)“やる気”が出るかな、と思って……」

 ダンボール工場で働きながら、プロゴルファーを目指す“やる気”を奮い起こしてきた前田。工場で働き始めて2年が経過した2008年、自身5度目のプロテストでやっと合格した。それでも前田は、工場の仕事をやめなかった。

「私の目標は、プロテストに合格することではなく、ツアーに出て戦うことでした。それで、テストに合格してからも、QT()で結果を出してツアーの出場権を得られるまで、工場で働き続けようと思っていました」
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。

 無事プロ選手にはなれたものの、QTの“壁”はさらに厚かった。ツアーフル参戦の権利を得られるような上位の成績は、なかなか出せなかった。

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