[2012年02月21日(火)]
【男子ゴルフ】マスターズ出場へ正念場。
石川遼が「機械になりたい」と吐露した真意
- 武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko
text by Sportiva - photo by Getty Images
「これから2カ月間、マスターズで一番いい状態でプレイすることをイメージしてがんばっていこうと思っていますが、今年はマスターズに出ることが決まっていた昨年とは、自分が立たされている環境が違う。マスターズ出場のために、結果が求められる。そういう意味では、これからの一試合、一試合がとても重要になってくると思っています」
今季3戦目となる米ツアーのノーザントラストオープン開幕前、最大目標となるマスターズ出場(3月26日発表の世界ランキング50位以内)へ向けて意欲を見せた石川だったが、決勝ラウンドに入ってからスコアを崩して、通算12オーバー72位タイに終わった。
予選ラウンドは決して悪くなかった。初日は海からの強風が吹きつける中、誰もがスコアメイクに苦しむ中、石川は我慢のゴルフを展開。「スイングの軸が不安定で、ゴルフ全体に1本筋が通っていないラウンド」とショットに不安を抱えながらも、アプローチでしのいで大崩れすることはなかった。
「このコースで、これだけ強い風が吹く中でラウンドするのは初めてでした。思わぬところで飛距離が伸びていたり、グリーンも硬くなっていたりして、戸惑いもありました。グリーン上でも難しいラインにつくことが多かったので、ほんのちょっとの差でパットが入らなかったりしましたが、悪いなりにというか、そういう中でよく耐えられたと思います。我慢の必要なラウンドで、その点では自分なりに評価できるプレイができました。
気持ちの面でも、しっかりテーマを持ってラウンドできました。一打、一打に集中して、うまくいかないショットが続いてイラッとしても、気持ちをコントロールしてリカバリーができました。また、ティーグラウンドに立つときは常にバーディーを狙う気持ちでいますが、『ここは無理して攻めなくてもいい』という判断もできていた。もちろんそれは、できるときとできないときがあるのですが、できないときが確実に減ってきたと思います」
第2ラウンドも序盤はパットが決まらずに苦戦したが、集中力を切らさずにプレイすることでリズムをつかみ、バーディーが先行。残り2ホール残して日没サスペンデッドとなるも、翌日早朝にきっちり結果を出して、1オーバー39位タイで予選通過を果たした。
ところが、第2ラウンド終了後に行なわれた第3ラウンドを迎えると、「だまし、だましプレイしていた」というティーショットが完全に乱れ始めた。前半だけで4つスコアを落として、トータル6オーバー68位タイに後退。途中、パットを叩きつけるなど、自身の不甲斐ないプレイぶりに苛立ちを隠せなかった。
「今日はまったく話にならない出来。新しいスイングにやっと慣れてきて、このスイングを固めようという段階なのに、スイングの軸がぶれ始めた。一度そうなると、簡単には建て直せなくなってしまう。体が左に傾きながらダウンスイングしてしまう感じで、前の打ち方に戻ってしまった感覚。結局、ドライバーではボールを置きにいくような打ち方になって、アイアンではほとんどフルスイングできなかった。その場しのぎのスイングではうまくいかないことを改めて痛感しました。本当に悔しいです」
そのまま最終日も、ショットは左右にぶれ続けた。10番スタート2ホール目の11番でボギー、13番でダブルボーギーを叩くと、石川の表情からはすっかり覇気が消え、彼の戦いは早々に終わった。
ショットの乱調について、石川は「まだスイングが固まっていない証拠。練習量で補って、コースでもしっかりとできるようにスイングを固めていきたい」と語った。しかし、それだけではないだろう。マスターズ出場へ、結果を求める潜在意識が微妙なスイングの変化をもたらしたのではないだろうか。
例えば、第2ラウンドで未消化だった2ホールを終えて第3ラウンドを迎えたとき、石川は「朝の2ホールはいい感じだった。そのあと、練習場でも良かったので、(第3ラウンドの)スタートをすごく楽しみにしていた」にもかかわらず、第3ラウンドでは「左に打ってはいけない、というのが特にインコースで多くて、そこで右にミスしがちだった。そのときはたいてい、左を嫌がって右にミスショットしてしまう、昔の自分のスイングになっていた」という。それはやはり、結果を求めるがゆえだろう。
この試合の前、マスターズ出場への決意を示すと同時に、石川は「この2カ月の大きな狙いは、メジャーで優勝するためのゴルフを作っていくこと。結果を求めて、スケールの小さいゴルフをしないようにしたい」と語った。しかしそれも、結果へと逸(はや)る気持ちを抑えるために、自らに言い聞かせているようでもあった。
予選ラウンドで「全然、自分のスイングができていない感じがします」と石川自身が漏らした不安も、本音を言えば、おそらく解消されていないのではないだろうか。
「練習場では理想のスイングができることもあるけれども、それが試合でできないという形がずっと続いている。ファーマーズのときにはいい感じで打てていて、そこでもう『できた』と思い込んでしまうのが人間。だから、できなくなってしまうと『おかしいな、おかしいな』と混乱してしまう。その繰り返しですね。できるならば、自分がマシーンに、精密機械になりたい。ドライバーや平らなところのアイアンショット、そしてパターとか、同じスイングを機械的に繰り返して打てるようになりたい」
今回の成績で石川の世界ランキングは56位へと後退した(2月21日現在)。次なるアクセンチュアマッチプレー選手権(2月22日~)で最低2勝しなければ、出場を予定しているキャデラック選手権(3月8日~11日)の出場権(世界ランク50位以内)さえ得られない可能性もある。マスターズ出場へ非常に厳しい状況を迎えているが、その行方を左右する大一番に、石川は不安を抱えたまま挑むことになる。




















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