鎌田大地の「飛躍の時はもう少し先になる」理由 ラツィオ番記者が指摘する指揮官の流儀 (2ページ目)

  • フランチェスコ・ピエトレッラ●文 text by Francesco Pietrella(『ラ・ガゼッタ・デロ・スポルト』)
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

【重要な資質はゴールへ向かう攻撃】

 こうした監督と選手間の"儀式"は、サッリが監督になって以来、30年以上も繰り返し行なわれてきた。例えばチェルシー時代にサッリの元でプレーしたセスク・ファブレガスは、サッリとのこんなエピソードを明かしている。

「チームの練習はいつも必ず午後3時から。そのため、私は子どもたちとなかなか一緒に過ごすことができなかった。そこである日、練習を午前中に変えてくれないかとサッリに頼んだんだ。ところが監督は、『練習は絶対に3時からじゃなければいかん』と、その要求を突っぱねた。なんでもピサの学者が、午後3時は身体にとってベストな時間だと科学的に証明したらしいというのがその理由だった」

 サッリのサッカーには迷信とメソッドが混在している。新しい選手がそれに慣れるのに時間が必要なのは当然だろう。もうひとり、ドリース・メルテンスの例も挙げておきたい。メルテンスは、サッリのドリームチームだったナポリのCFで、2016-17シーズンには28ゴールを挙げてセリエAの得点ランキング2位に輝いている。

 その彼が「偽9番」になる前は、サイドアタッカーとしてのプレーに苦労しており、わずか5ゴールしか挙げられない年があった。この2015-16シーズンは、サッリがナポリで最初に指揮を執った年だったが、メルテンスがスタメンでプレーしたのは40試合中14試合だけだった。しかし、翌年にはナポリのスターになっている。

 キーワードは「時間」だ。鎌田はラツィオの財産だ。サッリは彼を信じている。ラツィオは今、3つの大会を戦っており、週ごとのローテーションは必須だ。別の見方をすれば、そのなかで鎌田はラツィオの10試合中8試合に出場し、うち6試合に先発出場、1ゴール、1アシストをしている。セルティック戦では輝きを放つことはなかったが、グエンドゥージとともにプレーできることも証明して見せた。

 鎌田の重要な資質は、チームでも有数のゴールへ向かうあくなき攻撃であるとサッリは繰り返し強調している。このことは、昨季フランクフルトで挙げた16ゴールや、それ以前のベルギー時代の16ゴールが証明している。ラツィオの中盤では、ルイス・アルベルトでさえ、これほどのゴールを挙げてきている選手はいない。唯一それに匹敵するのは――フィジカルやプレースタイルは異なるが――アル・ヒラルに移籍したセルゲイ・ミリンコヴィッチ・サヴィッチだけだ。

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