あのファン・バステンも大絶賛! スペイン代表を頂点に導いたのは「守備でゴールをアシストする」18歳の攻撃的MF (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

【スペインは11年ぶりの戴冠】

 結局、両チームともノーゴールのまま、雌雄はPK戦で決することになった。

 スペインがリーチをかけた6人目。右SBのダニエル・カルバハルがチップシュートをゴール中央に決めた。いわゆる『パネンカ』というPKテクニックで5-4となり、スペインがネーションズリーグ初優勝を果たした。殊勲のパネンカを決めたカルバハルは、PKキッカーになった経緯を語る。

「PKキッカーのリストに、私の名前はありませんでした。しかし、監督に『もし蹴る勇気のない選手がいたら、私に蹴らせてください』とキッカーに志願したんです。こうして、私は6番目のキッカーになりました」

 会見場に現れたスペインのルイス・デ・ラ・フエンテ監督は、重荷が取れたようにホッとした表情だった。育成年代代表での実績こそ十分のデ・ラ・フエンテ監督だが「A代表の監督としてスターをまとめることはできるのか」という懐疑的な声もあったなか、3月のユーロ予選ではスコットランドに0-2で敗れ、プレッシャーがかかっていた。

「このチームの一員、スペイン、ここに来てくれた人たちにとって、幸せな優勝です。2010年に感じ合った思いを取り戻す芽になるでしょう」(デ・ラ・フエンテ監督)

 スペインは2008年、2012年のユーロ優勝を挟み、2010年の南アフリカW杯で世界一になって黄金期を築いた。オランダのエース、アリエン・ロッベンのシュートをつま先で防いだGKイケル・カシージャスのビッグセーブ、延長戦でオランダに引導を渡したアンドレス・イニエスタの決勝ゴール......その思い出は美しく、昨日のことのようでもある。

 しかし2012年ユーロの戴冠から、実に11年もの月日が経った。それ以降、スペインはビッグイベントで失敗が続いていただけに、ネーションズリーグ優勝を強豪復活への大事な成功体験にしたいところ。また、デ・ラ・フエンテ監督にとっても、ファンやメディアを味方につけるきっかけにしたいだろう。

 翌6月19日の夜8時半ごろ、スペイン代表一同はマドリード市内の体育館で大祝勝会を開き、集まった大勢のファンと優勝の喜びを分かち合った。完全敵地のロッテルダムから、彼らはやっとホームの開放感を味わい、長かったシーズンを締めくくったのだ。 

プロフィール

  • 中田 徹

    中田 徹 (なかた・とおる)

    スポーツライター。 神奈川県出身。オランダを拠点に、2002年よりサッカーを主に取材。オランダスポーツジャーナリストクラブ会員。

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