ブラジルがドイツに学ぶべき8つの教訓 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

「選手たちはスピードも技術もあって、ポジションチェンジを素早く繰り返しながら激しく攻撃的なフットボールができる。2004年に『こんなことをやりたい』と思い描いていたことが、すべて現実になっている」と、クリンスマンは語っている。だとすればブラジルに7-1で勝った準決勝は、現実を超えた何かだったのかもしれない。

 今はブラジルがどん底に落ち、自国のフットボールに革命を起こす必要に迫られている。ブラジルがドイツから学ぶべき教訓は少なくとも8つある。たとえば──

1 目下の危機を無駄にしてはいけない。自国のフットボールを根本から考え直そうという空気が今ほど高まることはありえない。ドイツ人の言い方を借りれば、今が「ゼロ・アワー(戦闘開始の時)」なのだ。

2 過去は忘れなくてはならない。5度のワールドカップ優勝など、今ではなんの意味も持たない。まだ自分たちはフットボールがうまい、という幻想を振りまくだけだ。ブラジルがめざすべきなのは、2018年のドイツのようにプレイすることだ。1970年のブラジルではない。

3 個人を批判すべきではない。準決勝に惨敗した後、ブラジルの一部のファンは、活躍できなかった哀れなFWフレッジをののしっていた。しかしフレッジがブラジルで最も優れたストライカーとされたのは、彼自身の責任ではない。問題は、システムが機能していないことだ。フレッジは機能不全の「結果」でしかない。

4 フットボールで最も重要なのはパスだ。ドリブルでもなく、根性でもなく、心理学でもない。ドイツは「パスの幾何学」にとりつかれていた。逆にブラジルは、もう戦術を真面目に考えることがなくなっている。だから監督のフェリペ・スコラーリとブラジルのメディアは、選手の涙ばかりに注目して大会の半分を過ごしてしまった。
(続く)

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