小笠原満男が教えることから距離を置いていた理由。「教科書どおりじゃない選手のほうが面白い」

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • photo by Aflo

短期連載:「鹿島アントラーズの30年」
第2回:「小笠原満男が描くアカデミーの夢」
第1回:「ジーコがまいた種」はこちら>>

 今年創設30年目を迎えた鹿島アントラーズ。Jリーグの中でも「すべては勝利のために」を哲学に、数々のタイトルを獲得、唯一無二のクラブとして存在感を放っている。

 その節目となる年にあたり、クラブの歴史を独自の目で追った単行本『頂はいつも遠くに 鹿島アントラーズの30年』が発売された。それを記念し、本の内容を一部再構成・再編集したものを4回にわけてお届けする。第2回は「小笠原満男が描くアカデミーの夢」。

現在は鹿島のアカデミーでテクニカル・アドバイザーを務めている小笠原満男現在は鹿島のアカデミーでテクニカル・アドバイザーを務めている小笠原満男 2018年シーズン終了限りで現役を引退した小笠原は、鹿島のアカデミー・アドバイザーを経て、現在はアカデミーのテクニカル・アドバイザーを務め、主にユースチームを指導している。

「今、アカデミーとしては、ひとりでも多くの選手をトップチームに上げるだけでなく、トップチームの主役になれる選手を輩出しようという意識で、選手の意識と質を高めたいと思っています。なぜアカデミーかといえば、早い選手だと幼稚園のころにアントラーズでサッカーを始め、小中高と続けてきた子どもたちにトップチームで活躍してほしいから。

 鹿島はすごく特殊なチーム。練習中の空気や勝敗に対するこだわりなど、いろいろあるけれど、2、3か月間のプレーだけでは、鹿島のサッカーを完全に理解するのは難しいと思う。だから、小中高の年代から、アカデミーで、鹿島のメンタリティーや戦い方を教えていければ、18歳になったとき、より完成された選手になれる。鈴木優磨や町田浩樹、沖悠哉がいち早くチームの主軸になっていったのも、小学生のころから、アカデミーでプレーし、ボールパーソンをやったり、アントラーズをずっと見てきているから。どういうときにどういうプレーをすべきかをわかっていたんだと思います。そういう選手を次々送り出すようなサイクルを作りたい。トップの選手が海外へ挑戦するというときに、アカデミーから『次の選手のスタンバイはできています』というふうにしたいんです」

 アントラーズユースでは今、柳沢敦が監督を務めている。柳沢監督は小笠原の存在の大きさを次のように語っている。

「守備でも攻撃でも攻撃的なサッカーを目指したいと考えています。選手たちが勝ちたいという欲を持つことが最も重要なので、それを引き出すような問いかけを意識しています。育成年代とはいっても、ユースの選手はプロ一歩手前の世代。勝つために必要なゲームコントロールを全員に求めています。そういう意味でも、数多くのタイトルを獲得し、勝ち方を熟知している小笠原満男の存在は大きい。ボールの奪いどころ、守備のタイミングなどをゲームや練習のなかで、リアルに伝えられるのは彼しかいない」

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