田代有三が現役引退。「鹿島がなければ、プロ生活は5年で終わっていた」

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

田代有三インタビュー(前編)

 オーストラリアに活躍の場を求めて2年。久しぶりに会った田代有三(36歳。ウロンゴン・ウルブス/オーストラリア)は、晴れ晴れとした表情をしていた。2005年に始まった14年にも及ぶプロサッカー選手としてのキャリアを締めくくろうとしているとは思えないほどに、だ。

 田代は2018年10月、現役引退を決めた。そこには、微塵の後悔もなかった――。

「鹿島アントラーズでプロとしてのキャリアをスタートしてからここまで、自分なりにその時々で、自分が考えるベストの選択をしてきました。モンテディオ山形に期限付き移籍をしたときも、鹿島に戻ったときも。初めて、ヴィッセル神戸に完全移籍したときも、海外へのチャレンジを探りながらセレッソ大阪でプレーしたときも。そして、34歳でオーストラリアにわたり、ウロンゴン・ウルブスで過ごした2年間も。

 初めての完全移籍が29歳の時で、以来"移籍"によって、いろんなサッカーや、いろんな人に出会って、その土地ごとに友だちもできて。サッカーだけではなく、自分の人生においてプラスになることばかりだったし、本当に毎日が充実していました。そう考えると、本当にすべての時間が幸せで、人に恵まれた現役生活だったと思います。

 だからこそ、もっと現役を......という考えもゼロではなかったし、ウロンゴン・ウルブスでは自分が希望すれば、もう1年プレーできたので『もう少し続けようかな』と考えたこともあります。でもこの2年間で、引退後にやりたいこと、チャレンジしたいことも見えてきたことで、2シーズン目の終盤には『早く次のキャリアをスタートさせたい』という気持ちが強くなっていた。それなら、現役にはきっぱりケジメをつけよう、と。

 並行して次のキャリアを考えられる人もいるけれど、僕の場合、選手でいるうちはどうしても(そちらに)本気になれない。その性格を考えても、また現役生活を『やり切った』と思える自分がいたからこそ、シーズンが終わる数試合前にクラブのオーナーに引退の意思を伝えて、自分なりにその覚悟を持って残り試合を戦い切りました。今は、本当にすっきりした気持ちです」

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