イニエスタは時間と空間を支配。神戸の同僚も「魔法」にかかった (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 イニエスタの存在によって、神戸の選手ひとりひとりがカタルシスを感じているのは間違いない。

「(イニエスタは)刺激になるというか、みんなうまくなっている気がしますね」

 神戸のセンターバックである渡部博文は、18歳のときにイニエスタのプレーを見てファンになったというだけに、そう感慨深げに語っている。

「練習から(逆を取られるので)当たれないです。体の使い方、ボールの置きどころがよくて。よく『背中に目がついてる』と言いますが、本当に"うわっ"となりますね。ロンド(ボール回し)でもワンタッチで的確に出せて。でも、アンドレスは『気を遣うな。自分を飛ばし、裏を狙っていけ。プレーテンポだけは落とさずに』と言ってくれるんです。なので、彼の足もとだけでなく、その先を見ようと、積極的にプレーできていますね」

 その効果は絶大だ。
 
 後半も、イニエスタは精度の高いプレーを見せた。自ら起点になって、ルーカス・ポドルスキのシュートを演出。要所で湘南の勢いをくじいている。76分には、ポドルスキが右サイドをパワー&スピードで持ち込み、左足で強烈なシュート。GKがこぼしたところを、郷家友太が鋭く詰めて押し込み、ダメ押し点とした。

「アンドレスは、自分のプレーを淡々としてくれています」

 神戸の吉田孝行監督は試合後に語ったが、それは高い境地に達した者にのみ許されるのだろう。難しいことを簡単にやってのける――。やはり、それは魔法に近い。

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