新国立競技場にサッカーファンの疑問。スタンドがなだらかすぎないか? (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文・写真 text & photo by Sugiyama Shigeki

(観客収容数は)五輪時で6万人。球技専用に改修されると8万人。3層のスタンドからなる構造で、1階スタンドの傾斜角は20度。階段の数は五輪時で32段。球技場改修後は8段増えて40段。座席数は五輪時で1万5000席。改修後は3万4000席となる。

 1階席のスタンドが、球技専用施設への改修後、陸上トラックを覆うようにピッチ方向に8段分伸びていくとすれば、20度という五輪時の傾斜角は、ピッチを下に掘り下げない限り、さらに緩くなる。16~17度ぐらいになるだろう。

 3万4000人もの観衆が10度台という緩すぎる視角で、サッカーやラグビーを観戦することになる。この、あってはならない大問題に、メディアの反応は鈍い。

 隈研吾さんはこの著書で、3層式のメリットや、神宮外苑の杜との調和については積極的に語っているが、なぜこの傾斜角になったかについての言及はなかった。サッカーファンがその点に大きな関心を寄せていることに気づいていない様子だった。設計者に願いが通じていなければ、願いが叶うはずがない。仮に設計者がサッカーファンの心情を知らなかったとしても、間に入ってやりとりしているのは誰なのか。陸上トラックのない球技専用スタジアムになったあとで、視角が緩くても問題なしと判断したのは誰なのか。

 ちなみに、2階席のスタンドは五輪時で1万6500席、球技場改修後で1万7500席と1000席しか変わらない。スタンドの傾斜角は29度で一定。そして3階席も改修前と改修後とで座席数は2万8500席で変わらず。傾斜角もいずれも34度で変わらずだ。

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