新国立競技場にサッカーファンの疑問。
スタンドがなだらかすぎないか?

  • 杉山茂樹●文・写真 text & photo by Sugiyama Shigeki

 昨年12月に着工した新国立競技場。掘削工事、地下工事などを経て、この夏、ようやく地上工事が始まった。

急ピッチで地上工事が行なわれている新国立競技場急ピッチで地上工事が行なわれている新国立競技場 姿を現したのは、バックスタンドの1階席部分の骨組みだ。スタンドは観客にとってスタジアムで一番重要な場所。サッカーファン(ラグビーファンもそうだろうが)は、その眺望に対して並々ならぬこだわりを持つ。その傾斜角。急なほど見やすく、緩いほど見にくい。視角はスタジアムの善し悪しを分ける分岐点。まさに生命線なのだ。 

 ところがだ。出現したその骨組みの傾斜は「嘘でしょ」と、目を疑うほどなだらかだった。新国立競技場をめぐる騒ぎは終わっていない。というか、今回は、いくら騒いでも後戻りすることはできない、まさに"後の祭り"の状態に置かれている。

 設計者である建築家の隈研吾(くま・けんご)さんは、スタンドの形状について、自身の著書『なぜぼくが新国立競技場をつくるのか』(日経BP社)の中で、図解をまじえて示している。だが、その内容は世の中にほとんど伝わっていない。少なくとも筆者が知ったのはつい先日。それまで、新国立競技場にまつわる情報は、ネットやテレビで垣間見た模型(五輪開催時のもの)のみだった。

 著書には以下のような内容が記載されていた。

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