出場機会0。ブラジルでの現実を受け止めた齋藤学
連載・世界に挑む男たち~齋藤学(1)
ブラジル、ナタウ。10人になったギリシャとの試合に引き分け、決勝トーナメント進出に黄信号が灯った日本陣営には、沈鬱なムードが流れていた。
「高さのないチームで放り込むくらいなら、ドリブラーの斎藤学を入れて勝負しろよ......」
記者たちが憤慨する声が聞こえた。「たら、れば」はプロスポーツにおいて意味がないが、最後までカードを切らなかった指揮官に批判が集中したのは、当然のことだった。
齋藤学はその現実を粛々と受け止めていた。
ブラジルW杯日本代表の合宿地、イトゥでの齋藤学「今日まで割と調子が良かったし、(交代出場が)あるかなと思っていたんですけどね。(本田)圭佑君や(香川)真司君が、ペナルティエリアの角でボールを持つとチャンスになっていたんで。僕も、中に入ってワンツーとかで崩せたらな、なんてイメージは膨らませていました」
レシフェでのコートジボワール戦に続いて出番はなかったものの、24歳になったばかりの彼にとって、W杯という舞台そのものが刺激であり、腐ったようなところはまるでなかった。
「僕がやるべきことは変わりません。練習は対人プレイをめっちゃ、やっていますね。とにかく体のコンディションを上げています。結構きついんですけどね」
彼は淡々とした口調で言った。
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