日本代表のストロングポイントはバーレーン戦でも明白 終盤のシステム変更が上昇ムードに水を差した (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【勢いを削いだ終盤のシステム変更】

 その矢先の後半35分、日本ベンチは堂安律と上田を下げる一方で町田浩樹と浅野拓磨を投入。4-2-3-1を5バック(5-2-3)に変更した。「守備固め」。頭をよぎるのは野球でよく使われる、サッカー的とは言えない用語だ。サッカーのスコア3-1は、野球で言えば6-1ぐらいの差に相当する。相手の力を考えれば、それ以上だろう。野球はそれでも抑え投手を送り込むなどして、慎重に守備固めを図る場合がある。あり得る交代かもしれない。

 しかしサッカーのコンセプトに照らしたとき、この交代は適当だったか。筆者には、芽吹いたつぼみを自らの手でいたずらに摘み取るような交代に見えた。

 ようやく、いい調子になったのに。待ちに待った瞬間が訪れたのに、後ろで守ってどうする。アルスママを埋めた3万人余りの観衆もこれを機に、スタンドを続々と後にした。

 もっとも5-2-3とはいえ、選手は実際、布陣どおりには並んでいなかった。顕著なのは3の右に座ったはずの南野拓実で、真ん中やや右寄りといった程度だった。左ウイング然と構えた三笘とは左右非対称の関係にあった。

 前にも述べたことだが、南野にサイドアタッカーとしての適性がないことは、この5-2-3を見ただけでも一目瞭然になる。相手が弱いのと、戦意を喪失した状態にあったので、穴にはならなかったが、プレッシングサッカー的な視点で言えば問題あり、だ。なぜこのタイミングで、文字どおり後ろを固めようとする作戦に出るのか。繰り返すが、筆者にはサッカーの本質に相応しい作戦とは思えない。

 さらに言えばこの時、1トップは浅野だった。今回、選ばれている日本の1トップのなかで、最もボールが収まらないタイプのCFである。5-2-3はそれまで使用してきた4-2-3-1に比べ、1トップが孤立しがちな布陣だ。ポストプレーヤータイプをトップに据えないと、サッカーは落ち着かない。

 これは意図的なのか否か。いずれにしても問題だ。野球的にはいい終わり方だとしても、サッカー的には違う。いつか痛い目に遭う日が来る。筆者にはそう思えて仕方がない。

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