サッカー日本代表の「サウジアラビア戦を観る権利」とは? 世界は母国のW杯予選をどう視聴しているか

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by KYODO

 カタールW杯まであと約1年、世界各地で予選が佳境を迎えようとしている。自国の代表チームの結果は誰もが気にかかることだろう。

 アジア最終予選では、A、B両グループの上位2位までが出場権を獲得し、3位がプレーオフに回る。日本は現在B組4位、今後は一試合、一試合の結果が重要となってくる。だが、日本のサッカーファンは、オマーンに敗れた初戦に続く2戦目の中国戦を、いつものように気軽にテレビで観戦することはできなかった。試合が中継されたのは有料動画配信サービスのDAZNのみだったからだ。注目の第3戦、10月7日のサウジアラビア戦も、地上波での放送予定はない。これはAFC(アジアサッカー連盟)が試合のテレビ放映権を値上げしたため、民放局がアウェー戦の放映を断念したからだ。

 かつてテレビ観戦といえば、それは地上波で視聴することを指していた。テレビとアンテナさえあれば、放送されている番組を誰でも見ることができた。だが、衛星放送、ケーブルテレビ、定額制動画配信サービス、PPVなど、映像を見る手段は多様になった。そんな中、世界のサッカーファンは母国のW杯予選をどのような手段で見ているのだろうか。

10月7日のサウジアラビア戦に向けてジッダで調整する日本代表10月7日のサウジアラビア戦に向けてジッダで調整する日本代表 結論から言うと、ほとんどの国で、W杯予選はいまもテレビの地上波で中継されている。

 たとえばイギリスでは、スポーツは公共の財産であるという意識が強い。国民が大きな関心を持っている大会については、貧富の差にかかわらず公平に視聴できなければならないという法律がある。そしてそれに基づき、無料で、それも国民の95%がアクセスできるチャンネルで放送しなければならないと明文化されている。

「国民が大きな関心を持っている大会」のリストは「クラウン・ジュエル」と呼ばれている。日本語に訳すと「王冠の宝石」。いかにも女王陛下のお膝元イギリスらしい、粋なネーミングだが、つまり、自由に試合を観ることができる権利は、王冠の宝石に等しいほどの価値があるということだろう。

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