中島翔哉が1年で激変した理由。社長直談判で実現したポルトガル移籍 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 ところが、昨年8月にポルトガルに移籍してからは一変した。ドリブルから覇気が伝わってくる。相手を断ち切り、なぎ倒すような剛胆さが宿っている。技に酔うのではなく、ゴールまで貫く覚悟というのだろうか。昨シーズンは10得点し、今シーズンも4得点で得点ランキング2位につける。

「(中島)翔哉は覚悟があったんだと思います。移籍するために、すべてをかけていたから」

 前所属先であるFC東京の選手たちが、その変化の理由について洩らしている。

 ポルティモネンセからオファーを受けたとき、中島は移籍を志願するが、当初、クラブからははねつけられたという。当然だろう。シーズン真っ直中で、攻撃のカードとして有力な一枚だったからだ。 

 だが中島は、来る日も来る日もフロントに懇願したという。練習後、社長に直談判することもあった。「もう帰った」と煙たがられても、車があるのを確認すると、その帰りを待ち続けた。それは何週間も続き、他の選手たちが呆れるほどだった。

 その果てに、中島は移籍という進路を勝ち取っている。本人としては退路を断つような思いだったのではないだろうか。人生の岐路を自ら選んだ、その覚悟がプレーからほとばしり出る。

 言うまでもないが、海外に渡るだけがサッカー人生ではない。Jリーグでも成長することはできる。しかし、中島は異国で戦うカタルシスを欲した。そして、世界のディフェンダーと日々、対峙することによって、その技の切れ味は増したのだ。

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