なでしこW杯で覚醒。オーストラリア戦で証明した勝負力 (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 一方で、オーストラリアのガス欠も主導権を握れた大きな要因だ。それもそのはず、日本の両サイドのビルドアップにマンツーマンのようにはりついて繰り返しアップダウンをさせられたのだ。スタミナは限界だったはずだ。加えて天候の問題もあった。気温26℃との発表ではあったが、その数字は信じがたい。暑いのではなく、もはや“痛い”日差しは、ワンプレイごと選手たちに肩で息をつかせるほどエネルギーを消耗させた。

 灼熱の人工芝は選手たちのスタミナはもちろん、技術の精度をも奪う。立ち上がりから、なでしこたちの繰り出すパスはイメージよりも短かく、思うようにボールを運ぶことができなかったのも仕方のないこと。士気を高めるためにしきりに声を掛け合っていたが、声を張り上げるにもパワーが必要な状況だった。

 この試合開始時間は両者からベストパフォーマンスを奪うもので、エドモントンの気候をわかっていながら、なぜこの環境がベスト8の舞台に選ばれたのか大いなる疑問である。ハーフタイムに選手たちが足を氷で冷やさなければならない環境など適しているはずがない。

 そんな中で、90分集中を切らさず走り切ったこと、精度は落ちながらも自分たちのサッカーを表現し続けたことには、感服させられる。戦術云々ではなく、絶対に相手よりも先に足を止めてなるものかという、なでしこらしい強い意志を感じる試合だった。

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