今野泰幸投入で引き締まった、日本代表の現実を憂う (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 アジアカップの準備試合と言うより、結果を欲しがった試合。ケーヒル、ブレシアーノといったベテランの実力者を、終盤に投入したオーストラリアと比べると、それはより鮮明になる。

 ザッケローニが監督を続けていてもよかったのでないか。この流れでアジアカップに向かえば、監督を交代した意味、新チームになった意味は限りなく薄いものになる。

 ここに来て、すっかり表に出てこなくなった協会首脳陣も情けないが、アギーレに対してカリスマ性が薄れたことも確かだ。

 比較したくなるのは、2002年日韓共催W杯に韓国代表監督として臨んだヒディンクだ。韓国サッカー協会はヒディンクに「弱い国と対戦して、勝つ試合をして欲しい」と求めたそうだが、彼はそれを断り、ひたすら強いチームと対戦した。そして敗戦の山を築いた、意図的に。ファンは「ヒディンク辞めろ!」と騒いだが、チーム力は2002年本大会が近づくにつれ上昇。ヒディンクは、本番から逆算して考える強化プランを完璧に実行し、韓国代表をベスト4入りさせた。

 国民を敵に回しても、自らの信念を貫こうとする真の頑固さ、改革者としての凄みを、いまのアギーレから見て取ることはできない。世論とうまく折り合いをつけながら、事を穏便に進めていこうとする現実主義者としての顔が覗く。

 この流れで、アジアカップで優勝を逃せば、救いはない。ブラジル戦のように、実験を重ねながら優勝を逃しても、救いはある。2018年には生きてくる。

 オーストラリア戦にスタメン出場した選手の中で、2018年W杯を20代で迎えられる選手は酒井高徳、吉田麻也、香川真司、武藤嘉紀のわずか4人。ベンチを眺めても塩谷司、昌司源、松原健、田口泰士、森岡亮太、柴崎岳の6人だ。30代の選手は1チーム3人までというチーム作りの常識に従えば、新戦力の開拓は急務。この他に10人は、26歳以下の選手を探す必要がある。

 ブラジル戦後、あるイベントで、元日本代表監督、岡田武史氏は「代表のユニフォームを着る、日の丸をつけるという重みが、だんだん軽くなってきたと感じて残念だった」と述べたそうだが、それに相応しい人だけに代表のユニフォーム着させていると、日本の将来は危うくなる。

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