斎藤佑樹が日本シリーズでプロ入り後最速の147キロをマークするも「右腕がまったく上がらない。これはヤバい...」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 そして11月の終わり、医者から『右肩の関節唇損傷』と診断されてしまいました。同時に「関節唇を傷めた野球選手は多い、とくにピッチャーは7割くらい痛めている」「手術しないと剥がれている軟骨はくっつかないけど、それが剥がれていても痛みが出なければ投げられる」「ちゃんとしたポジションに関節が収まっていれば痛みは出ないはず」「そうなったら手術しなくても大丈夫」と、丁寧に説明していただきました。

 それ以外にも、棘上筋のささくれとか腱板の損傷とかが複合的に合わさった痛みではあったのですが、まずはすべての炎症が収まって、ポジションを元に戻すことができれば年明けから投げられる......そんなふうに理解して、これは大丈夫なんだ、まずは肩を2カ月休ませてしっかりケアをしようと考えました。

 炎症が治まるのを待つだけの2カ月、僕はジッとしていられなくて、ひたすら走ったり、下半身のトレーニングをしていました。キャンプが始まる2月1日には炎症が治まっている、痛みは消えているはずだと信じて、肩は休める、ほかは鍛える毎日です。

 いま思えばそれだけで我慢すべきだったと思うんですが、僕もパニックに陥っていたんでしょうね。医学的にはこれは7割はやっている症状だからそんなに深刻じゃないと聞かされたはずなのに、「キャンプまで時間がないから早く治さないと」と焦って、治してくれると言ってくれたいろんな人のところへ足を運びました。

 みなさん、治してくれようという気持ちはすごく強かったんですが、そのなかには「3日で治す」と言ってくれた人がいて、じゃあ、と思って通ったら3日で治らず、「1週間は必要だった」と言うからさらに4日通ったのにそれでも治らず......そんな経験もしました。

 時間がかかるからじっくり地道に治そうと言ってくれた人もいましたが、僕のほうが焦っていたので、それでは意味がないと思ってしまったり、そんなところでも勉強になった2カ月だったと思います。

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