安達了一「僕がショートを守っていないオリックスは強い」。リーグ優勝の裏にあった覚悟と葛藤

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 日本シリーズが終わった。

 スワローズに敗れた第6戦、バファローズの安達了一はベンチに入ることもできなかった。第1戦では6番に入って3打数1安打、1つのフォアボールを選んで、セカンドとしての好守備を披露するなど存在感を発揮した。

 第2戦では9番に入って2つのフォアボールを選び、好投を続けていたスワローズの高橋奎二に球数を投げさせて仕事人ぶりを見せつけた。しかし舞台を東京ドームに移すと、3戦、4戦、いずれも6番としてヒットを打つことができず、次第に打席での粘りも失われていった。

今季はおもにセカンドを守り、3年ぶりに100試合出場を果たしたオリックス安達了一今季はおもにセカンドを守り、3年ぶりに100試合出場を果たしたオリックス安達了一この記事に関連する写真を見る プロ5年目の2016年、潰瘍性大腸炎を発症した安達。

 厚労省から難病に指定されているものの、適切な治療を受ければある程度は症状を抑えることが可能だとされている。安達は病気と闘いながら、その後もプレーを続けてきた。体調のせいなのか、あるいは調子の波なのか、その見極めが難しいなか、バファローズと安達は2年前から週に2試合程度の休みを取りながらプレーすることを決断する。

 そんな安達を日本シリーズで最大限に生かすため、中嶋聡監督は第5戦で安達を外し、セカンドに太田椋を起用した。王手をかけられた時点で、日本一を勝ち取るためには第7戦へ持ち込まなければならなくなったからだ。

 7つのうちの4つを取るために安達は欠かせない。だから安達を休ませて、万全の状態で第7戦に起用する──もちろん太田がスタメンから外せないほどの活躍を見せればどうなっていたのかはわからないが、もし第7戦があったら、安達がセカンドに戻っていた可能性は高かったと見る。

 持病と闘いながらもチームから貴重な戦力として求められる......そんな安達を支えてきたのは、2014年に味わわされた悔しさだった。

■リーグ優勝の時、真っ先に思い浮かんだのが2014年のことだった

 森脇浩司監督のもと、ホークスと壮絶なデッドヒートを展開していた7年前のバファローズは2014年 10月2日、福岡での直接対決を迎えていた。この一戦がシーズン最終戦だったホークスはバファローズに勝てば優勝決定、残り2試合のバファローズがホークスに勝てばバファローズにマジック1が点灯するという、まさに土壇場の大一番だった。

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