西武・森友哉が挑む「捕手で首位打者」が至難である理由

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 小池義弘●撮影 photo by Koike Yoshihiro

 気の早い話だが、1965年の野村克也(南海)、1991年の古田敦也(ヤクルト)、2012年の阿部慎之助(巨人)以来となる、史上4人目の「捕手で首位打者」が今季誕生するかもしれない――。

 西武の高卒6年目、森友哉が開幕から好調だ。4月15日時点で、いずれもリーグトップの打率.383、打点16を記録している。

優れたバッティング技術で現在打率首位の森友哉優れたバッティング技術で現在打率首位の森友哉 捕手で首位打者がどれほどの偉業かは、前例の少なさと、先達の名前を見ればわかるだろう。

「好調の要因? わからんっス。いずれ打てない時期が来ると思うので、そのためにコツコツとヒットを打つことが大事かなと思います」

 森がそう話したのは、今季1号3ランを含む5打数4安打と猛打を炸裂させた4月6日の日本ハム戦のあとだ。この時点で打率.483。さすがにそこからは落ちてきたが、14試合終了時点でリーグ2位の栗山巧(西武)に5分の差をつけている。

 森の類まれな打撃センスは、プロ入り1年目から絶賛されていた。

「『絶対打ちますよ』と一軍に推薦しました。育成がこちらの目標ではあるけど、育成を飛び越えて戦力になりますよ、という判断ですね」

 2014年7月、当時の潮崎哲也二軍監督はそう話した。将来の正捕手としてファームでじっくり育てる方針を覆すほど、森は二軍で打率.341と打ちまくっていた。一軍で左の代打が手薄だったことで初昇格すると、高卒新人として46年ぶりの3試合連続本塁打を放っている。

 森のような「打てる捕手」にとって、悩みの種になるのが、その優れた打撃力だ。捕手としてはまだ一軍レベルに達していないものの、高い打力を眠らせておくのは「宝の持ち腐れ」と首脳陣は考え、指名打者や外野へのコンバートで打席に多く立たせようとする。

 代表例が、現役なら近藤健介(日本ハム)、引退した選手では和田一浩(元西武など)や小笠原道大(元日本ハムなど)だ。いずれも入団時の捕手ではなく、バットマンとして名を馳せた。

 森も2015年には23試合、2016年には49試合、外野で起用されている。昨季終了後にFAで巨人に移籍した炭谷銀仁朗は球界屈指の守備力を誇り、高い壁として立ちはだかった。

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