トライアウトで実現した運命の対戦。鵜久森淳志「まさかここでも...」

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 日本ハム退団後に受験した、2015年以来自身2度目となるトライアウトでの全打席を終えた鵜久森(うぐもり・あつし/前ヤクルト)を、報道陣が取り囲む。感想を述べる際にも、凛々しい表情が崩れることはない。

「カウント1-1からのスタートということもあり、"代打"で出場したつもりで初球から積極的に攻めの気持ちでいこうと決めていました。そこはできたと思います」

自身2度目のトライアウトとなった鵜久森淳志自身2度目のトライアウトとなった鵜久森淳志 他球団が自分を獲得するとしたら、代打での起用を念頭に置くことは間違いない。そこでの活躍をイメージさせるような打席の入り方、スイングをトライアウトでも表現したいと考えていた。

 4打席に立ち、2打数無安打2四球。結果を受けたあとも、「野球である以上、ヒット、アウトの結果は出るものなので、そこは割り切りました。次の打席への切り替えであったり、シーズンから心がけていたことを変えることなくやろうと考えていましたし、そこは達成できました」と前を向いた。

 この日の打撃成績から、ヤクルトに所属した3年間に話題が移ると、真っ先に述べたのが球団への感謝だった。

「ヤクルトに入って『打席に立つ喜び』をあらためて感じることができました。何というか"野球少年"に戻れたような......。そんな感覚でした。選手、イチ野球人としてはもちろん、人間的にも成長させてもらえた3年間。戦力外を伝えられてからも、周りの選手と同じようにバッティング練習をさせてもらったり、最後までサポートしていただきました。そのおかげもあって、今日を迎えられたので、本当に感謝しています」

 その後いくつかの質問に回答し、報道陣の数もまばらになると、崩すことのなかった表情に幾ばくかの"柔らかさ"が宿った。

「須田(幸太・DeNA)と対戦ができて......。それが嬉しかったですね」

 同学年にあたる鵜久森と須田。ただ、2人の縁はそれだけにとどまらなかった。

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