北別府学から藤浪晋太郎へ。
「君はここで終わるような投手じゃない」

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 阪神藤浪晋太郎が、いまだ長いトンネルを抜け出せずにいる。9月5日の広島との首位攻防3連戦の初戦を任されるも、4回を5安打、4四死球、5失点と先発の役割を果たせず、5月4日以来となる白星を挙げることはできなかった。そんな藤浪の現状を心配する声はあちこちから聞こえてくるが、元広島の大エース・北別府学氏もそのひとりだ。北別府氏は8月17日に、『藤浪投手に寄せて』というタイトルで自身のブログを更新。そのなかで、自らのスランプの時期を重ね合わせ、「なんとかこの苦境を乗り越えて、新しいステージに進んでほしい」とエールを送った。その北別府氏の目に、広島戦のピッチングはどう映ったのだろうか。

5月4日以来、勝ち星から遠ざかっている阪神・藤浪晋太郎5月4日以来、勝ち星から遠ざかっている阪神・藤浪晋太郎 本人も首位攻防戦の初戦のマウンドを託された意味はわかっていただろうし、それに応えたい気持ちもあったことは伝わってきた。だけど、相手と勝負する以前に"自分との戦い"になっていた印象があた。

 結論からいうと、まだまだ本調子にはほど遠いと言わざるを得ない内容だった。ランナーがいない場面では、彼本来の150キロを超すストレートがいいコースに決まるのだが、ランナーを背負った途端に制球を乱してしまう......。狙ったところにいかず、引っ掛かったり、抜けたりするボールも何球かあった。

 ピッチャーが制球を乱す理由はいろいろあるのだが、藤浪投手の場合は腕が"横ぶり"になってしまうのが一番の原因だと思う。もともと藤浪投手はインステップしながらも腕を真上から振り下ろして投げるタイプで、しかも190センチを超す長身。これが立体的で独特の角度を生み、打者にとっては非常に厄介な投手だった。

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