大田泰示、新天地で大いに語る「プロ野球の世界でも一番になりたい」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

「55番については、プレッシャーがなかったと言えばウソになりますけど、結局、プレッシャーって自分で作り出すものなんですよね。周りじゃなくて、自分が勝手に作っちゃう。だから気持ちさえコントロールできれば、何も気にならないはずだし......そりゃ、ジャイアンツのときはいろんなことを思いましたよ。いろんなことをね」

 才能の覚醒がいつかいつかとずっと期待されながら、その期待に応えることができなかった複雑な思いが、大田の言葉から垣間見える。

 ジャイアンツでの8年間、大田は期待され、その期待を裏切り、それでも注目され、やはり結果を残せないという繰り返しに苛(さいな)まれてきた。プロで打ったホームランは、通算で9本。8年間で9本しかホームランを打ってないバッターにジャイアンツファンがこれほど胸を躍らせ続けたのは、5年前にかっ飛ばしたプロ初ホームランも、去年、大谷翔平から打った先頭打者ホームランも、とてつもなくドデカいホームランだったからに他ならない。今も昔も、遠くへ飛ばせる「カッコいい」バッターだったはずの大田は、しかしプロ入り直後、カベにぶち当たる。

「プロのピッチャーが投げるボールの速さ、コントロール、スライダーのキレ......最初、これはついていけないなと思いました。ただ、6月くらいには慣れてきましたし、ファームのピッチャーからは最終的に17発打てたので、そこは乗り越えられたと思ってます。当時の二軍監督は岡崎(郁)さんだったんですけど、ずっと『お前は飛ばせ、小っちゃいこと考えずに三振かホームランでいいんだ』と言い続けてくれたのが大きかったと思います。でも、一軍の舞台ではそういうわけにはいきません。結果の求められる世界で、たまにホームランを打てても三振ばっかりじゃ、使ってもらえない。だから、打たなきゃいけないというプレッシャーは常にありました。一軍と二軍を行ったり来たりする選手というのは、どうにかして一軍のベンチに残って、というせめぎ合いの中にいる。この選手が打った、じゃあ、次にオレが打てなかったらファーム行きだなって考える選手がジャイアンツにはたくさんいるんです。その手の会話も多かったし、そういうチームの雰囲気が僕はイヤでした。自分の立ち位置が確立できないから、結果を出そうとあれこれ考えてしまうんです」

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