かつての盟友たちが語る中日・和田一浩「2000本安打秘話」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 和田独特の打撃フォームについては、「変な打ち方に見えるけど、すごく理にかなっている」と山﨑氏は言う。

「体の中心でボールをとらえて、駒のように回転して打つ。あれは下半身の粘りがあるからできるのですが、子どもにあの打ち方を真似しろとは言えない(笑)。高いミート力が要求されるし、あのボールの運び方はベン独特の形で、あの打ち方を真似しようとしてもバッティングの形を崩すだけ。それにベンのすごいところは、自分のバッティングを確立しても、平気で変えられること。常に向上心を持って野球に取り組んでいるよね。そういう意味で、イチローとよく似た選手なのかもしれない」

 ちなみに、42歳11カ月での2000本安打到達は、谷繁元信(中日)の42歳4カ月を抜いて史上最年長での達成となり、30歳で初めて規定打席に到達した選手の2000本安打も史上初だった。

「僕の知っている2000本安打達成者は、谷繁にしてもそうですが、何かしら人間として毒を持っているんですよ。プロは人を踏み台にしていかなきゃいけない世界ですから。ところがベンは本当に毒のない、普通のおじさんなんです(笑)。プロ向きじゃないぐらい優しくて、物知りな常識人。正直、よくここまでプロの荒波の中でやって来たなという男なんですよ。そういう意味で、ベンはまたひとつ例のない2000本安打達成者じゃないですかね」(山﨑氏)

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