楽天のルーキー・安樂智大が松井裕樹に見せた「裏の顔」 (3ページ目)

  • 穂積健太郎●文 text by Hozumi Kentaro
  • photo by Nikkan sports

 その若さが良くない形で出たこともある。

 6日のブルペンでは投球直前に普段はしない遠投を入れ、あえて違うルーティンで臨んだが、結果は大荒れ。ままならない自身の投球に苛立ちを隠せず、不機嫌なまま練習を続け、山下スカウトから「ちょっとこい!」と呼び出され、室内練習場でお説教を受けるという一幕もあった。山下スカウトは「受け答えは超一流ですし、頭の回転も速い。パッと見た感じは礼儀もしっかりしていますが、やはりまだまだ子どもですよ。体も大きいとはいえ高校生です。人間的な教育はこれからですね」と言う。

 昨年10月に就任した大久保博元監督は礼儀作法をチームに徹底する方針を打ち出している。毎日の練習メニュー表には「挨拶→立ち止まり大きな声で!」としっかり書かれているほどだ。だが、「口を酸っぱくして言ってきたのに、安樂は2度も立ち止まらなかった」(大久保監督)と教育係の松井裕と一緒に叱責される羽目に。

 大久保監督は「一事が万事。こういうところを我々は見ている。一軍の試合に出られる28人は責任感のある大人でないといけない。体も心も鍛える時間が必要だろう」と、13日から沖縄・金武(きん)での一軍2次キャンプには帯同させず、久米島で練習を続ける二軍に合流させる方針を示した。

 もちろん安樂の二軍行きは未熟さだけによるものではない。

 安樂の調整段階は9日に捕手を座らせた状態で2度目のブルペン投球を行なったばかり。高村祐投手コーチは「まだまだ実戦に臨めるような段階ではない」と話している。久米島居残りは「彼が目標に挙げたように1年目から開幕ローテーションに入り、新人王を目指すというのなら、練習時間を確保しないといけない。(沖縄)本島に移ると実戦が中心になるので、安樂のためにならない」という大久保監督の親心が大きいのだ。

 南の島で平成の新怪物が見せた大人びた一面と幼さ。その才能の偉大さには誰もが疑いを差し挟むことのない。右腕は、この1年でどんな成長を見せてくれるだろうか。

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