【プロ野球】先発か、抑えか。巨人・澤村拓一の適性はどっちだ? (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 荒川祐史●写真 photo by Arakawa Yuji

 ただひとつ疑問が残るのは、澤村に抑えの適性があるのかどうかだ。かつて中日で絶対的クローザーとして活躍し、今年行なわれるWBC日本代表の投手コーチを務める与田剛氏は、抑え投手の条件を次のように語る。

「球が速い、三振が取れるということも条件のひとつですが、最も必要なことは状況判断です。抑えというポジションは点をやってはいけないわけですから、問われるのは内容よりも結果。点を取られないピッチングを第一に考えなければいけません。四球だって必要な時があるし、わざと塁を埋めることもある。その中で、どこに打たせればいいのか、どのバッターでアウトを稼ぐのか、いろんなことを瞬時に判断しないといけないわけです。そうしたピッチングを今の澤村にできるかといえば、まだそこまでいっていないような気がします。一昨年と比べれば、変化球の使い方や駆け引きもうまくなった。とはいえ、まだまだ力に頼ったピッチングの印象が強いですね」

 槙原氏も続く。

「やはりコントロールという部分で不安はあります。四死球58はチームワーストですし、簡単に追い込んでからの四球も多い。昨年までのピッチング内容だと、どこまでできるのか不安は大きい。ただ、抑えの経験は今後の野球人生に必ずプラスになると思います」

 そして与田氏は、原監督の「澤村抑え転向プラン」の狙いを、次のように説明する。

「抑えはたった一球のミスで勝利を逃すことがあります。先発なら初回にホームランを打たれても、味方の援護があれば負けにはならない。つまり先発と抑えでは一球の重みが全然違うわけです。原監督にしてみれば、この一球の重みを澤村に感じてほしいのではないでしょうか。そうすることで考え方も変わってきますし、ピッチングの幅も広がる。だから、貯金ができていないというだけで抑えにしようと考えているわけではないと思います。澤村の能力を最大限に引き出すための手段として、抑えという選択肢もあるということを示したのだと思います」

 連続日本一を目標に掲げ、さらなるレベルアップを図りたい原監督にとっても、澤村の飛躍は欠かせない。将来、巨人のエースになるべき素質を持つからこそ、求めるものも大きくなる。先発か、抑えかというわけでなく、投手としてまだまだ成長してほしいという原監督からのメッセージだったのではないだろうか。そうした指揮官の期待に結果で応えるしかない。勝負の3年目、澤村拓一のシーズンが間もなく始まる。

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