「立浪和義、片岡篤史は徳を積むために草むしりをしていた」PL学園元監督の中村順司が甲子園春夏連覇の偉業を振り返る (3ページ目)

  • 藤井利香●取材・文 text by Fujii Rika

●急遽スタメンの宮本慎也が値千金のプレー

 試合はPLのペースで進み、ポイントとなったのは4−1で迎えた8回の守備だった。木内監督が打席に入る主砲にホームランを狙えとジェスチャーしている。それを見て中村監督も伝令を送り、2番手としてマウンドに上がっていた岩崎に「自分の一番いい球で勝負しろ」と伝えた。

 しかし、結果はレフト前ヒットで二塁ランナーがホームイン。と、そこで値千金のプレーをしたのが、公式戦初の先発出場でサードに入っていた2年生の宮本慎也だった。

「深瀬が2つ前の習志野(千葉)戦で右肩を脱臼し、準決勝の帝京戦には左手で捕球、送球しながら強行出場させましたが、決勝では無理と判断しました。宮本を急遽スタメンで送り、木内さんは何度も宮本を狙ってきましたよ。

 でも、試合前練習ではアップアップだった宮本がどのゴロも無難にさばき、しかも8回のシーンではホームは間に合わないとすばやく判断。打者走者がオーバーランしたところで矢のような送球を一塁に送り、アウトにした。ホームに投げてランナーを二塁まで行かせていたら、試合の流れは常総のほうへ行ったと思います」

 中村監督は日頃から正しい体の動きを身につけ、走攻守ともに基本に忠実にプレーするよう指導していた。送球は受け取る側が捕りやすいよう、相手の胸めがけて投げる。キャッチボールができない選手は試合に出さないというほど徹底していた。

「大学へ進学したらベンチ入りは24人(当時)でしょ。キャッチボールがきちんとできたら守備でベンチ入りできるんです。だから、しっかりやれと。打つだけではおもしろくない。守れるから試合に出られるチャンスが増えるわけで、その典型が宮本です。

 ボールを吸収するようにグラブ捕球ができ、ヤクルトでは野村克也監督に認められて早くから使われ、結果的に2000本安打にもつながった。そんな宮本のがんばりを、一塁の片岡がこう言うんですよ。宮本をうまくしたのは自分。練習で少しでもボールが逸れたら捕らなかったからと(笑)」

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