大谷翔平の兄も奮闘。都市対抗で大敗もトヨタ自動車東日本が一歩前へ (2ページ目)

  • 佐々木亨●文 text by Sasaki Toru
  • photo by Kyodo News

 3回表には、大谷翔平(アナハイム・エンゼルス)の兄として注目された1番・大谷龍太が、アウトコースのストレートを逆らわずにライト前ヒット。地元の岩手県金ヶ崎町からバスで約8時間をかけて東京ドーム入りをした応援団の胸を熱くした。

 チームカラーである赤色に染まったスタンドの後押しを受けて、選手たちは最後まで笑った。どれだけ苦しい展開になろうとも、夢舞台で戦う喜びを失うことはなかった。

 あの日々を思い出せば......。

 創部当初を振り返り、エースの阿世知は「最初は野球になっていなかった」と言う。わずか13人でスタートした野球部だ。ピッチャーである阿世知が、苦肉の策としてファーストで出場することもあった。

 初代キャプテンとしてチームの中心を担ったに関口翔は言う。

「都市対抗出場に向けて『5年を目標にやりなさい』と言われてスタートしたチーム。初めはチームのルールもなく、自分たちで一からチームをつくってきました。僕が主将の間は目標を達成することはできませんでしたが、これまでの野球部の歩みは無駄ではなかったと思います」

 現主将である北見は、今夏の都市対抗出場を決めて「やっと勝てた......」と心底思ったという。そして、チームの成長をこう語るのだ。

「今年はとにかく『攻める』ことを選手それぞれが意識してきました。チームとして言葉にしたわけではありませんが、自然とチーム全体に『攻め』の姿勢が生まれた。それが今年の結果につながったと思います」

 チームの土台を作ってきた大谷、吉橋、阿世知らの一期生。そこに北見ら二期生が加わり、チームの骨格ができていった。今年になって、大谷翔平と花巻東高校時代の同級生である2年目の大澤永貴(えいき)ら、若い力も台頭してきた。

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